日本学術会議,国際光デーシンポジウム2025を開催

著者: 梅村 舞香

日本学術会議総合工学委員会ICO分科会主催の国際光デー記念シンポジウムがこの7月7日,日本学術会議講堂(東京都港区)において開催された。

今年のテーマは「光が拓く科学技術の最前線」だった。今回のシンポジウムには約230名が参加。また,全国から約80グループの若手研究者によるポスター発表も行なわれ,参加者との交流を深めていた。

2018年にユネスコが国際光デーを定めたことを受け,ICO(International Commisiion for Optics:国際光学委員会)分科会は,同シンポジウムの開催を続けてきた。新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開催の時期もあったが,一昨年よりリアルで実施されている。

当日はまず,元ICO会長で東京大学・特任教授の荒川泰彦氏が開会の挨拶に立ち,シンポジウムの開催趣旨とICOの概要について語った。

ICOは1947年に設立され,光学とフォトニクスにおける科学技術の発展と普及を目的として活動している国際光学委員会で,2022年に国際学術会議(ISC)の正会員に昇格した。荒川氏は2014~2017年までICO会長を務めてきたが,現在副会長は電気通信大学の美濃島薫氏が務めるなど日本のプレゼンス向上も図っている。ICOは賞の授与,出版,国際会議の開催といった活動を続けているが,荒川氏は日本にもこうした活動に積極的に参加することの重要性を改めて呼びかけた。

続く講演では,「励起子のボース統計性と量子凝縮」と題し,理化学研究所理事長の五神真氏が登壇。これまでの研究を紹介しつつ,複合ボソンが示す量子統計性の意義を振り返り,新たなインパクトについて語った。

固体中の素励起である励起子は,光機能発現やエネルギー輸送などを担うことから,基礎応用の両面で長年研究が進められてきた。五神氏は,バルク結晶を希釈冷凍機温度以下に保持し,3次元で励起子ボース凝縮体を実験的に捉えることに成功した。

 

次に,「量子もつれを駆使した光量子センシングの進展」と題し,京都大学教授・光量子センシング教育研究センター長の竹内繁樹氏が登壇。近年急速に進展する量子技術の中で,光量子センシングは,従来の光技術の限界を超える高感度測定や,新たな機能を実現できる可能性があり注目されている。

竹内氏は,量子もつれ状態にある光子を利用する光量子センシングの現状と展望について,その基礎から応用,社会実装に向けた取り組みを語った。また,光量子センシングの例として,可視の光源と検出器で赤外分光を可能にする,量子赤外分光や,分散媒質中でも分解能が劣化しない特長を持つ光量子断層撮像などを紹介した。

休憩を挟み,続いて登壇したのは産業技術総合研究所 製造基盤技術研究部門 副研究部門長の奈良崎愛子氏で,「最先端レーザープロセス開発と未来社会実装に向けて」をテーマに講演を行なった。フェムト秒パルスを中心としたレーザー光が材料中に作り出す誘起構造を利用した最先端レーザープロセスの研究について,産総研の取り組みや,国内外での注目すべき事例を交えて語った。

例えば,レーザープロセスの広大なパラメータ空間制御のためのデータ駆動型レーザー加工技術開発から,量子フォトニクス応用を目指したレーザー欠陥エンジニアリングによる単一光子源作製といった新たな試みまで,最先端レーザープロセスの未来社会実装に向けた取り組みを紹介した。

次に,NTTフェロー・連携会員の松尾慎治氏が「光電融合に向けた化合物半導体メンブレンデバイスの展開」と題する講演を行なった。光インターコネクション技術のボード間からパッケージ内への適用に向けた光電融合デバイスの進展について紹介した。AI技術等の進展によりデータ通信量は加速度的に増加し,これに伴う消費電力増大が問題となっている。

消費電力の削減のために電気配線の光化が極短距離でも必要とされているが,これまでの技術の延長では実用化は困難と考えられ,化合物半導体とシリコンフォトニクスの異種材料集積技術とシリコン電子回路と光デバイスの協調による低消費電力化,高性能化,省スペース化に向けた光電融合デバイスの開発が重要となっている。近年の技術の進展について紹介した。

全ての講演終了後は,ICO副会長で電気通信大学・教授の美濃島薫氏が閉会の挨拶に立ち,それぞれの講演内容の統括を述べた。

シンポジウム終了後はポスターセッションを経て,場所を移しての懇親会が開催され,日本における光科学技術力のプレゼンス向上とともに国際競争力確保に向けて産学一体となって貢献していくことを改めて確かめあった。

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