理研ら,新方式の光量子コンピューターを開発

理化学研究所(理研),日本電信電話(NTT),イジングマシン向けSDKと実行環境からなるクラウド基盤を提供するFixstars Amplifyは,新方式の量子コンピューターの開発に成功したと発表した(ニュースリリース)。

これは,時間分割多重化手法を用いた測定誘起型のアナログタイプの光量子コンピューター。光波の振幅値が情報のキャリアとなり,時間分割多重と測定誘起型の手法により,大規模かつ効率的な量子コンピューターとなる。

この量子コンピューターでは,量子テレポーテーションを繰り返して計算を実行する。量子テレポーテーションは,測定の部分に変更を加えることで,恒等操作ではない様々な量子操作を実現できる。

測定誘起型の手法は,まず大規模な量子もつれを生成し,測定を介して量子テレポーテーションを繰り返し実行し,マルチステップの量子操作を実現する。大規模な量子もつれの生成には光の進行波としての性質と時間分割多重化手法を活用する。

光パラメトリック増幅器でスクイーズド光を連続的に進行波として生成し,これを時間的に区切って光パルスとする。二つのスクイーズド光を重ね合わせ,2者間量子もつれを連続的に生成し,これらの光パルスを操作し,2者間量子もつれを異なる時間に分配する。

同時刻に存在する四つの光パルスをマクロノードと呼び,並べ替えを行なうと量子もつれが時間的に格子上の広がりを持つ。この量子もつれが光量子コンピュータの計算リソースとなり,時間をかけたぶん大きな量子リソースが利用できる。

実際の計算は,各マクロノードに対してテレポーテーションベースの量子操作をし,多入力に対して多段階の量子操作を実行する。今回は約100個の連続量入力に対し任意ステップ数の線形演算が可能。

光パラメトリック増幅器は周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路で,帯域約6THzと,最大8dB程度のスクイージングレベルを両立。光のパルス幅は時間的に10ナノ秒,空間的に3m相当で,これは100MHzのクロック周波数に対応する。このパルス幅は,現状の光測定器と付随する電子機器の帯域による。

光測定器のコントロールと測定値のデータ収集を行なうプログラマブルロジックデバイスは,100MHzで電気パルスを生成し光の測定基底を高速で操作する。これにより所定の量子操作を各マクロノードに行なう。

この光量子コンピュータはクラウドと接続されており,ユーザーは量子回路をデザインしクラウドへ送信すると,実行結果をクラウド経由で受け取ることができる。

研究グループは,連続変数の線形変換が可能であることから,連続量の最適化問題などへの応用や,非線形変換の機能を導入することでニューラルネットワークなどへの応用も期待されるとしている。

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