産業技術総合研究所(産総研)と東京理科大学は,超伝導量子ビットを高い忠実度で高速に初期化する新しい手法を開発した(ニュースリリース)。
量子ビットを用いた量子コンピューターでは,従来の計算機と同様に計算を始める際にビットを初期化する必要がある。最も単純な初期化方法は,量子ビットのエネルギー緩和時間を越えて待機することで実現が可能。
しかしながら,量子計算機の研究開発の進展に伴う量子ビットの性能向上によって,量子ビットのエネルギー緩和時間がサブミリ秒(1秒の1万分の1)からミリ秒(1秒の千分の1)程度と長くなっており,初期化時間を短縮するための能動的な手法が求められている。
また,近年提案されている量子誤り訂正においても,量子ビットを保護するための量子ビットを繰り返し初期化する必要があるため,高速で忠実度の高い初期化技術の実現が待たれていた。
初期化の実験は産総研内施設において,産総研と東京理科大で共同で行なった。実験では,まず,100ナノ秒程度のマイクロ波信号を量子ビットに照射することで超伝導量子ビットを励起状態(|1>)へと遷移させる。
続いて,周波数の異なるマイクロ波信号を超伝導量子ビットに照射することで,超伝導量子ビットの励起状態(|1>)を超伝導共振器中の光子に変換する。この際,量子ビットは励起状態(|1>)から基底状態(|0>)へと緩和する。
さらに,励起状態(|1>)を光子へと変換するマイクロ波と同期させて,超伝導・常伝導接合に電圧を印加することで接合によって光子吸収を行ない,超伝導量子ビットの初期化が完了する。
研究グループは,上記の初期化プロセスを繰り返して行ない,量子ビットが初期化後に基底状態(|0>)にある確率を見積もった。初期化時間の増加とともに,超伝導量子ビットの基底状態の確率が増加し,180ナノ秒で99%以上の忠実度で初期化が完了していることがわかった。
また,実験結果と理論計算を比較し,この研究で行なった超伝導量子ビットの初期化が,超伝導・常伝導接合の光子吸収によって加速されていることを確認した。
超伝導・常伝導接合の光子吸収を利用することで,超伝導量子ビットの初期化時間を短縮できることを実験的に確かめた。この初期化手法は,複数の超伝導量子ビットの初期化にも適応可能であり,今後の大規模な量子コンピューターの実現に貢献する技術だとしている。