日本電信電話(NTT)は,光ファイバーを用いて離れたところにある対象物に紫外線を照射しウィルスを不活化する技術「Fivery(ファイバリー)」の研究開発に着手した(ニュースリリース)。
新型コロナウイルスをはじめとする感染症流行を防ぐ対策として,紫外線を照射することでウィルスを不活化する方法に注目が集まっており,光源を搭載した機器から直接紫外線を照射する製品が使われてはじめている。
これに対し同社は,これまで培ってきた光通信技術を活用して,直接紫外線を照射するのが難しい場所・場面にも光ファイバーを用いて紫外線を届けウイルスを不活化する技術の研究開発に着手した。
この技術では,光ファイバーを用いて伝送した紫外線を対象物に照射することでウィルスを不活化する。光源装置と照射場所を光ファイバーでつなぎ,照射したい場所に光ファイバーの出射端を設置して紫外線を照射することを想定しているという。光源装置と照射対象を離すことができるため,光ファイバーを設置できる空間があれば,狭いところや光源装置の設置が難しいところへも紫外線を届け照射することが可能だとしている。
また,光通信で用いられている光信号の分岐や経路切り替えなどの仕組みを活用して,一つの光源装置を用いて複数の照射対象へ紫外線を照射する,人の動きに合わせて照射パワーを制御するといった集中制御を行なうことで,効率的かつ安全な紫外線照射の実現をめざしているという。
さらに同社はこれまでに,高速大容量かつ狭隘部への光通信を提供する光ファイバー,あるいは通常の光通信の1万倍の高強度光を伝搬する光ファイバーなど,赤外波長領域で多様な特性を有する光ファイバーを実現してきた。このような光ファイバー技術を活用することで,光通信とは異なる紫外波長領域においても,ウイルス不活化に有効な紫外線の伝送に適した光ファイバーを実現できると考えている。
具体的には,光ファイバー出射端から離れた対象領域のウィルスをピンポイントで短時間かつ効率的に不活化したり,2つの空間の間に紫外線のバリアのようなものを形成してエリア間の感染リスクを軽減したりといった新たな利用シーンの開拓が期待されるという。
今後は,紫外線に適した光ファイバおよび照射システムの研究開発を進めつつ,同社の社内施設などにおける実証実験を行なって,このシステムの特長が活かせる新たな利用シーンを開拓していくとしている。