情報通信研究機構(NICT),科学技術振興機構(JST),桐蔭学園桐蔭横浜大学及び千葉大学の研究グループは,自然な光で照明された3次元空間や蛍光体の発光を,瞬間のマルチカラーホログラムとして記録できるシステムの開発に成功した(ニュースリリース)。
その場のありのままの情報を3次元画像センシングする技術・システムに関する研究開発が世界的に進められている。インコヒーレントディジタルホログラフィは,レーザーを用いず自然な光で3次元情報をホログラムとして記録するため,動画記録可能な3次元蛍光顕微鏡,3次元非線形光学顕微鏡,自然光ホログラムセンサーへの応用が期待されている。
一方で,自然な光のカラーホログラムセンシングでは,従来カラーフィルタアレイ又は多数回の記録が必要で,明瞭なホログラムの取得,記録時間を短縮化できる原理の創出が課題だった。そのため,色で分子組成が標識された,複数種類・多数の蛍光体を同時に,1回の撮影で,明るいホログラムとして記録できる3次元顕微鏡が実現できずにいた。
研究グループは,ホログラフィの原理を用いて多次元情報を多重記録する技術の一つであり,NICTが提案する,計算機内のコヒーレント多重を利用する方式(計算コヒーレント多重方式)を用い,カラーフィルタアレイ不要,1回の撮影で,一般照明光や発光体をマルチカラーのホログラムとしてセンシングできるシステムを開発した。
専用のモノクロイメージセンサーの搭載により,このシステムが実現した。これにより,色で分子組成が標識された複数種類・多数の蛍光体の,瞬間のカラー多重ホログラフィック3次元顕微鏡センシングを世界で初めて実証した。
試作イメージセンサーでは,波長情報の記録のためにカラーフィルタの色吸収を用いず,波長依存性位相変調素子アレイを用い,計算コヒーレント多重方式に必要な色ごとに異なる光波のリズム(位相)変化を与えることで,カラー情報と明るいホログラムの取得を両立。1回のホログラム画像撮影で測定できることから,従来のホログラフィック多重を用いるカラー多重3次元蛍光顕微鏡に比べ,測定回数250分の1以下を達成した。
これらの成果は,生体観察や動的現象の観察にとって不可欠な,多数の物体の同時かつ高速なマルチカラー3次元動画像観察の実現を強力に推進するもの。NICTは,光学システムの改良により,記録の高速化や,多数の動く微小物体の同時3次元動画像観察,より小さな物体の高画質観察を行ない,自然光など弱い光に適用可能なマルチカラー3次元動画像顕微鏡として活用と発展を目指すとしている。