理科大ら,赤外自由電子レーザーでセルロース分解

著者: sugi

東京理科大学,京都大学,日本大学,立命館大学らの研究グループは,セルロースに赤外自由電子レーザー(IR-FEL)を照射することによって,グルコースやセロビオース(グルコースの2量体)など低分子量の糖類に効率よく分解されることを発見した(ニュースリリース)。

セルロースは豊富に存在するバイオマス資源であり,グルコースが多数結合した天然高分子。これまでサトウキビやトウモロコシなど食料としての利用と競合する植物資源からグルコースを得て生産されてきたバイオエタノール燃料の新たな原料となり得ることから関心を集めているが,その化学的安定性からグルコースへの分解が難しいことが課題となっている。

一方,IR-FELは強力なパルス波レーザーであり,特にこれまで低分子量の化合物への照射で化学結合が切断される現象が知られていた。

研究グループは,グリコシド結合の切断と直接関係しうるC-O伸縮振動を励起する波長9.1 μmのIR-FELの照射に加えて,波長7.2μm(H-C-O変角振動),3.5μm(C-H伸縮振動)の照射がどのような影響を与えるか検討するため,波長9.1μmの照射のみ,波長7.2μmの照射後に波長9.1μmの照射,波長3.5μmの照射後に波長9.1μmの照射,の3通りを試みた。さらに比較として,照射なし,グルコース環に多数あるOH基のO-H伸縮振動に対応した波長3.0μmの照射,の2通りも行なった。

その結果,2段階でIR-FELの照射を行なった場合にセルロースのグルコースへの分解が効率的に引き起こされたことが見出された。

その理由としては,セルロース分子鎖同士が多数の水素結合で強固に結び付いている剛直な構造において,波長7.2μmや波長3.5μmのIR-FEL照射によってH-C-O変角振動,C-H伸縮振動を励起したことがそれぞれのセルロース分子鎖をほぐす役割をし,その後にグリコシド結合のC-O伸縮振動を励起することで効率的な結合の解離が起きたとしている。

この研究の成果は,セルロースだけにとどまらず,リグニンなど木材を構成するその他の物質の分解への適用も視野に入るため,森林バイオマス全体の画期的なリサイクル活用方法につながり,さらには脱石油社会の発展に寄与することが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 北大,水素とナノファイバーを合成する光触媒を開発

    北海道大学の研究グループは,金属錯体色素を複層化した光触媒ナノ粒子とアルコール酸化触媒分子を連動させることで,持続利用可能な資源であるセルロースからクリーンエネルギー源となる水素と高機能材料となるセルロースナノファイバー…

    2025.08.28
  • 帝京大ら,緑藻の群体増殖には光照射が必須と解明

    帝京大学,宇都宮大学,日本女子大学は,群体性緑藻フタヅノクンショウモの無性生殖に及ぼす光照射の影響を解析した(ニュースリリース)。 地球上には,多種多様な形態や生態を持つ微細藻類が数多く存在する。これら藻類の増殖は,光,…

    2024.10.04
  • 理研ら,光合成細菌を窒素肥料として利用可能に

    理化学研究所(理研)と京都大学は,破砕・乾燥処理した海洋性の非硫黄紅色光合成細菌のバイオマスが作物栽培の窒素肥料として利用可能であることを明らかにした(ニュースリリース)。 食糧生産を担う現在の農業は化学合成された無機肥…

    2024.06.12
  • 三菱ガス化学,レンズモノマー設備新設と販売を開始

    三菱ガス化学は,同社四日市工場(三重県四日市市)内における眼鏡レンズ向けプラスチックレンズモノマーの製造設備新設および四日市工場浪速製造所において製造するバイオマスレンズモノマーの販売開始が決定したと発表した(ニュースリ…

    2024.01.24
  • 上智大ら,ブドウ糖を高感度・高選択的に蛍光認識

    上智大学,早稲田大学,千葉工業大学は,環状オリゴ糖とシンプルな蛍光性分子の超分子複合体によって,水中でのブドウ糖(D-グルコース)の高感度・高選択的な蛍光認識に成功した(ニュースリリース)。 ブドウ糖(D-グルコース)は…

    2022.12.26
  • 三井化学,植物由来のメガネレンズ材料を発売

    三井化学は,植物由来の原料を使用した高屈折率レンズ材料「Do Green(ドゥ グリーン)」シリーズに屈折率1.60の「MR-160DG」をラインナップに加え,4月1日より販売を開始した(ニュースリリース)。 「MR-1…

    2022.04.05
  • 広島大,もみ殻からシリコン量子ドットLEDを作製

    広島大学の研究グループは,もみ殻に含まれるガラスから,オレンジ色に発光するナノシリコン(シリコン量子ドット:SiDQ)を合成し(発光効率21%),更にそれを用いたシリコン量子ドットLEDの開発に成功した(ニュースリリース…

    2022.02.10
  • 東大ら,赤色蛍光グルコースセンサーを開発

    東京大学,東京工業大学,マイオリッジらは,細胞内のグルコース(ブドウ糖)を可視化できる,赤色のグルコースセンサー「Red Glifon」(Red Glucose indicating fluorescent protei…

    2021.07.02

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア