愛知医科大ら,眼圧リズムの制御構造を解明

愛知医科大学,近畿大学の研究グループは,脳視床下部の視交叉上核(SCN)が副腎グルココルチコイドおよび交感神経ノルアドレナリンによって,眼圧リズムを生み出す巧みな仕組みを,マウスを用いた実験で世界に先駆けて明らかにした(ニュースリリース)。

緑内障は,眼圧が上昇する事により,視神経が傷害され失明につながる難治性の疾患。眼圧には約24時間の概日リズムがあり,夜間に高くなりやすい眼圧は緑内障発症に関与すると考えられている。眼圧リズムは概日時計中枢であるSCNによって制御されているが,その詳細な仕組みは不明だった。

研究グループがマウスの副腎と上頚神経節の両方を外科的に除去したところ,恒暗条件下で眼圧リズムは夜間の上昇が抑制される形で消失した。そこで,グルココルチコイドまたはノルアドレナリンの点眼投与により眼圧リズムが消失したマウスで眼圧の日内変動が回復するかを検討した。

その結果,点眼時刻に関わらず眼圧リズムが回復し,その位相は点眼時刻に依存していた。これらの結果は,両方が制御因子であることが判明した。

次にグルココルチコイドおよびノルアドレナリンのターゲット部位を同定するため免疫組織化学によりグルココルチコイド受容体(GR)とβ2 アドレナリン受容体の発現を解析したところ,眼房水産生部位である毛様体の無色素上皮細胞のpars planaで強く発現していることが判明した。

そこで,時計遺伝子Per2の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を導入したマウスを用いて,毛様体組織培養におけるPer2の発現リズムを時系列測定し,副腎除去や上頚神経節除去の影響を解析した。

その結果,副腎除去や上頚神経節除去ではPer2リズムが大幅に減衰し,位相がずれてしまうことが判明した。これらは,グルココルチコイドやノルアドレナリンが毛様体に作用し,そこの概日時計を制御していることを示唆している。

さらに研究グループは毛様体時計の眼圧リズム形成への関与を明らかにするため,毛様体特異的時計遺伝子Bmal1ノックアウトマウスを作製し,毛様体の概日リズムが消失したマウスを作製し,眼圧リズムへの影響を検証した。

その結果,眼圧リズムが消失するという予想とは異なり,そのリズムは維持され,眼圧リズムを生み出すには毛様体の局所時計は必要ないことが明らかになった。

これらの研究成果から,眼圧リズムは副腎グルココルチコイドと交感神経アドレナリンにより制御され,毛様体上皮の時計に依存しない仕組みであることが示唆された。

この研究により,緑内障の時間治療や新規治療薬の開発が期待されるとしている。

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