産総研,大口径で高精度な平面形状測定装置開発

産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは,直径600mmまでの平面基板をnmレベルの絶対精度で凹凸を測定できる形状測定装置の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

今回用いた技術は,物体表面の局所的な角度分布を測定し,得られた角度分布を積分して物体表面の形状(凹凸)を得るというシンプルな原理に基づく測定法であり,参照面を必要としない,大口径の形状も測定可能,といった特長がある。

今回開発した平面形状測定装置(3D-SDP)について,まずオートコリメーターと呼ばれる角度測定装置を用い,そこから出射される角度測定用の光ビームを,ペンタゴンミラーを介して試料表面に当てる。

ペンタゴンミラーを直線移動させて試料表面上で光ビームの当たる位置を走査し,反射光ビームの位置から,局所的な角度分布を測定する。ペンタゴンミラーを用いることで,走査に伴う運動誤差を除去できるため,高精度な角度測定ができる。

得られた角度分布を積分すると,試料表面のライン形状が取得できる。また,試料を回転させて測定することで,放射状に複数のライン形状が取得できる。放射状の各ライン形状は600mmまで測定可能となる。

角度分布測定に用いるオートコリメーターは5nradの分解能を有し(0.1nm以下のライン形状測定分解能に相当),産総研が保有する角度の国家標準器を用いてオートコリメーターを校正することで,0.15µradの精度(約2nmのライン形状測定精度に相当)で角度分布を測定することが可能となる。

ライン形状測定に加え,ペンタゴンミラーを試料の回転中心からある半径位置に移動し,試料を回転させながら角度分布を測定すると円周形状も得られる。円周方向の角度分布を測定する際は,試料回転に伴う回転ステージの運動誤差が測定結果に加わる。

そこで,もう1台の回転補正用オートコリメーターを用いて,運動誤差を除去できる高精度回転機構を導入してライン形状と同様にnmレベルの形状測定を実現した。最終的には,ライン形状と円周形状の交差点データが一致するように,ライン形状データと円周形状データを接続すると,5nmの絶対精度で試料の三次元表面形状(平面度)を求めることができる。

今回開発した3D-SDPの妥当性を検証するため,現在の平面度国家標準機であるフィゾー干渉計との比較測定を行なった。フィゾー干渉計で測定できる口径300mmの平面基板を比較測定した結果,両者の平面度測定結果は1nm以下で一致することが確認できた。

この3D-SDPを用いることで,λ/40(約15nm)~λ/20(約32nm)の平面度を有する高精度な大口径平面基板の製造技術開発が期待されるという。また,この3D-SDPは,曲面形状も測定できるため,ミラーの絶対曲率測定などへの応用も期待できるとしている。

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