東北大ら,超高密度金属ガラスを高圧熱処理合成

東北大学,物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは,Zr50Cu40Al10金属ガラスに高圧熱処理を施し,回収したバルク試料の諸特性評価を行なったところ,超高密度のアモルファス状態が試料内部に形成されていることを明らかにした(ニュースリリース)。

金属ガラスはランダム構造を有する材料で,その状態数はほぼ無限大であると考えられるため,構造制御を通じた幅広い材料設計が大いに期待されている。

しかし,従来の常圧における熱処理を通じた制御手法では,結晶化が容易に生じてしまうことから,これまで観測されてきた状態は,ガラスが取り得る全状態数のほんの一部に過ぎないと考えられる。ただ,その「未見のガラス」状態を観測することは非常に難しく,これまでその潜在性は明らかになっていなかった。

今回,研究グループは,高圧を負荷することで結晶化を遅延させかつ,熱処理後の急冷を通じてその状態を室温で凍結することで,これまでにない大幅な構造改変が達成された新規のガラスが創製できるのではないかと考えたという。バルクとして試料を回収し,これまで構築してきたガラス状態,ランダム構造評価の知見を通じて,その特性評価,状態解明を試みた。

Zr50Cu40Al10金属ガラスに1万気圧を超える圧力を室温で負荷後,結晶化が生じる温度直前で熱処理を行ない,そこから急冷を施すことで,高温高圧でのガラス状態を室温にて凍結したバルク試料の回収に成功した。

その試料の密度を測定したところ,大幅な密度上昇が認められ,金属ガラスに部分的に微細な結晶が析出した試料よりも依然高いという特異な状態にあることが分かった。また,電気抵抗測定結果から,それを裏付ける結果が得られた。

常圧での熱処理では到達が困難であることが熱分析により示唆され,形成された状態は,これまで結晶化に隠されていた「未見のガラス」であると予想されるという。機械的特性評価から,試料は通常の金属ガラスと比べても高い強度特性を示し,また同時に変形誘起の結晶化を通じた塑性伸びも見られた。

今後,試料のガラス状態及びランダム構造を詳細に調査することで,ランダム構造の極限状態の解明や材料設計の可能性の拡大が期待され,この研究成果はガラスの基礎・応用研究の両側面に重要な知見を与えるものとしている。

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