ニコンは同社の特許侵害行為の停止を求め,半導体露光装置を製造販売するオランダのASML Holding N.V. およびその関連会社(以下ASML)と,ASMLに光学部品を供給する,ドイツのCarl Zeiss SMT GmbH(以下Zeiss)に対し,オランダ,ドイツ,日本において訴訟手続きを開始したと発表した(ニュースリリース)。
ニコンは,これまでASMLおよびZeissとこの件の解決に向け協議を行なってきたが合意に至らず,ASMLとZeissによる同社の特許技術の無断使用が継続しているとして,法的権利を行使することにしたという。
2000年代初頭にニコンが開発した液浸露光技術は,スマートフォンやメモリチップなど最先端半導体の製造に欠かせない。現在,ニコンとASMLの2社だけが液浸露光装置を製造・販売している。
ASMLは,同社の2016年12月期通期の売上高の76.3%にあたる約35億ユーロが液浸露光装置による売上であると公表しており,ニコンは,これらの装置には同社の特許技術が使われているとしている。一連の訴訟では,ASMLとZeissによるこれら製品の流通,販売の差し止めとともに損害賠償を求めていく。
ニコンの取締役社長兼社長執行役員である牛田一雄氏は,「液浸露光技術を含む当社の最先端技術特許を無断で使用してきたことにより,ASMLは同社の半導体露光装置事業を拡大させてきたと確信している。知的財産権を尊重しあう環境は公正かつ健全な競争の前提であり,イノベーションを推し進めるために最も重視すべきものだと考え,今回の提訴を決断した」とする。
同社は13年前にも特許を無断使用されたとして,ASMLとZeissに対する提訴を行ない,当時の米国における訴訟は同社に有利な形で和解に至っている。だが,その後もASMLとZeissが無断で同社特許を使い続けているとして,今回の訴訟に至った。