京大,強度と延性を兼ねる金属の可能性を発見

京都大学の研究グループは,銅-アルミニウム(Cu-Al)合金において高い強度(通常粒径材に比較して5.6倍の降伏応力)と延性(引張伸び40%)を両立できることを発見した(ニュースリリース)。

金属材料において高い強度と大きな延性を両立させるためには,変形後期まで十分な加工硬化特性を持たせることが必要となる。

研究グループは,Cu-Al合金では,通常の転位の他に積層欠陥や変形双晶が塑性変形の担い手として活発に活動することで,高い加工硬化率が維持され大きな延性が実現されること,また粒径によって転位,積層欠陥,変形双晶の活動時期が変化し,それに伴って加工硬化挙動が大きく変わることを世界に先駆けて見出した。

特に,超微細粒材で積層欠陥や変形双晶の発現が活発化するという結果は,従来の予想とは逆のものであり,粒界から積層欠陥や変形双晶が新たに核生成する,超微細粒金属(バルクナノメタル)特有の現象と考えられるという。

これを理解するためには従来の理論(転位論)だけでは不十分であり,新たな視点で解明していく必要がある。そうした基礎的理解が進めば,従来理論では限界があるとされていた「強さ」と「ねばさ」を兼備した材料が幅広い合金系・材料系で実現され,我々の社会の安心と安全を支える構造材料の世界に飛躍的な革新をもたらすことが期待されるとしている。

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