日立,視認性の高い小型HMD用LED光学エンジンを開発

日立製作所は,強い外光下においても,高い視認性を実現する小型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)向けの光学エンジンを開発した(ニュースリリース)。保守点検などの両手を使う屋外での現場作業において,作業・行動を支援するシステムなどへの応用を期待している。

近年,製造ライン・保守管理・物流などの現場において,HMDは,ハンズフリーで多くの情報を確認することができることから,新しいオペレーションの形を提供するものとして期待されている。

特に屋外作業での活用を考えた場合,長時間連続使用が可能なことや強い外光下でも視認が可能な明るさを実現する必要がある。これまでは,光学エンジン内にある光源のLEDから発した赤・青・緑の光を拡散板で拡散させ,混ぜ合わせることで画面の色合いや明るさを均一にしていたが,目以外の方向にも光が逃げてしまうため,画面が暗くなるという課題があった。

そこで日立は,LEDが発した光を閉じ込めながら混ぜ合わせることで,視認性の高い光学エンジン技術を開発した。具体的には,導光路をトンネル形状にすることで,全反射による光の閉じ込めを行なうとともに,多数の粒子状のレンズを入れ,光を屈折・拡散させて混ぜ合わせた。これにより,光の損失を抑えつつ,色合いや明るさを均一にすることが可能となる。

さらに,画面を明るくするために,導光路から出射した光を平行なビーム状にする,特殊な形状をした非球面型の専用レンズを開発して光の損失を抑えた。

これらにより,従来の拡散板を使用した技術に対して,約8倍の光利用効率となる輝度8,000cd/m2を低消費電力で実現し,外光下でも高い視認性を可能とした。この光学エンジンを搭載したHMDを使用することで,屋外でも視覚的に作業内容を伝え,作業の効率化と確実性の向上を両立することなどが可能になるという。

同社は今後,この技術による光学エンジンを搭載したHMDの開発を行なっている日立エルジーデータストレージと協力し,ユーザと実証実験を重ね,製品化に向けた技術開発を行なうとしている。