東大ら,常温常圧の温和な条件下で窒素ガスからアンモニアを合成する反応機構を解明

7東京大学の研究グループと九州大学の研究グループは共同で,2010年に開発したアンモニアの合成方法の鍵を握る中間物質(単核モリブデンニトリド錯体)の開発と単離に成功し,その反応機構を解明した。このアンモニア合成方法では,窒素分子で連結された2個のモリブデン間で電子の受け渡しが起きていた。

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窒素は,核酸,アミノ酸,タンパク質などに含まれる生命活の動維持に必須な元素であり,医薬品,化学繊維及び肥料などにも含まれる重要な元素の一つ。窒素の大部分は,鉄系触媒の存在下で窒素ガスと水素ガスからアンモニアを工業的に合成(ハーバー・ボッシュ法)することに利用されている。

しかし,この方法は高温高圧(400-600℃、200-400気圧)の条件下で行なわれるため,より温度も圧力も低い温和な条件下で窒素ガスからアンモニアを合成できる方法が望まれていた。

2010年に東京大学の研究グループは,2窒素架橋2核モリブデン錯体を触媒に用い、常温常圧の極めて温和な条件下で、アンモニアを合成する方法を開発していた。しかし,この新しい方法の反応機構は未解明であった。

今回の成果は,現在のアンモニア合成法であるハーバー・ボッシュ法に代わり得る次世代型の窒素固定法の開発を前進させる重要な研究成果であり,この成果を基にして将来的には環境に優しい新しいアンモニア合成法の開発とその大幅なコストダウンの達成が期待できる。