日本電子ほか、Liの分析も可能な電子顕微鏡用高エネルギー分解能軟X線分光器の開発に成功

科学技術振興機構の産学共同シーズイノベーション化事業(育成ステージ)により、日本電子、東北大学、島津製作所および日本原子力研究開発機構は、分光素子として電子顕微鏡用に最適な不等間隔溝回折格子を開発し、Liの分析も可能な高分解能軟X線分光器の開発に成功した。

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開発した分光器は分光素子として不等間隔溝回折格子を採用しているため検出系に可動部分がなくなり、この素子のカバーする全分光領域のスペクトルを一度に計測できるばかりでなく、選定した走査領域の各点のスペクトルをスペクトルマップとして収集できるという大きな特長を持っている。

この分光器のエネルギー分解能は、EPMAに用いられている通常の波長分散型分光器(WDS)よりも1桁以上良好で、商用機としてもAl金属のAl-Lスペクトルにおいてフェルミ端で0.3eVを保証している。また、この分光器は50eVからの分光が可能で、通常使用されているWDSおよびエネルギー分散型分光器(EDS)では不可能であるLi-K発光(54eV)の計測が可能。

この特長を利用すれば、Liイオン電池負極のLiの充・放電に伴う挙動などを追跡することも可能で、Liイオン電池の開発・評価などに資する事が期待される。高いエネルギー分解能を持つため、この分光器で取得した特性X線のスペクトルは元素の化学結合状態を反映した形状を示す。このスペクトル形状の違いを利用すれば、化学結合状態の異なる同一元素の分布をマップとして表示すること、化学状態マッピングができる。さらに、この分光器P/B比はWDSおよびEDSよりも良いので、鉄鋼中の数10ppmの微量のホウ素や窒素などの検出、定量も可能となっている。

これまで、Li-K、Be-K、B-K、C-K、N-K、O-K、F-K、Mg-L、Al-L、Si-LおよびP-L発光スペクトルについて、かなりの観察例を収集。今後、種々の金属、無機および高分子材料、電子材料、電子デバイス、電池などの分野での応用が進展し、これまでのEDSあるいはWDSでは得られなかったような有用な知見に基づく物質、材料の特性に関する基礎的理解に資するばかりでなく、特に化学結合状態がEPMA利用のルーチンで分析できる特性が実用的な材料の開発、評価、検査などへの応用に利用されることが期待される。

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