東工大、体内の余分なマグネシウムを尿中に排出する新たな経路を特定

東京工業大学は、海水魚の尿細管に発現するマグネシウム輸送体の解析を行った結果,細胞内液胞に局在するSlc41a1を介したマグネシウムの排出系路を見出した。

130621tokodai1

まずトラフグ(海水魚)のゲノムデータベースからマグネシウム輸送体の候補遺伝子を網羅的に同定し,その中から腎臓で高発現する遺伝子を特定した。その結果Slc41a1と呼ばれる遺伝子がマグネシウムを尿中に分泌する細胞(近位尿細管細胞)で高発現することを見出した。

淡水と海水で棲息できるトラフグ近縁種のメフグを用いて腎臓での遺伝子発現を比較したところ,海水で飼育したメフグの腎臓では淡水で飼育したメフグの腎臓に比べSlc41a1の発現量が約3倍に上昇していた。Slc41a1の局在を免疫蛍光法および免疫電子顕微鏡法で確認したところ,興味深いことにSlc41a1は細胞内の液胞と呼ばれる場所に局在することが明らかになった。

近位尿細管細胞の管腔側(尿側)には微絨毛が密に存在し,微絨毛は栄養素の再吸収やイオンの再吸収・排出(分泌)を行う。海水魚の腎臓では,硫酸イオンやカルシウムイオンが微絨毛を介して排出されることがこれまでの研究から明らかになっていた。今回の研究で,マグネシウムイオンは細胞内の液胞に一度蓄えられてから尿側に放出されるという別の経路をたどることが明らかになった。マグネシウムイオンを一度液胞に蓄えてから捨てる仕組みはヒトなど他の動物細胞にも存在する可能性が高く,今後,新たなマグネシウム排出経路が明らかになると期待される。

詳しくはこちら