次世代型太陽電池技術の開発は,カーボンニュートラル社会の実現,エネルギー自給率の向上,ならびに地球規模での温室効果ガス排出削減という喫緊の課題に対する有効な戦略として,近年ますます注目を集めている。中でも有望な候補とされているのが,ペロブスカイト太陽電池(PSC)であり,これらは低コストかつ大面積製造に適した特長を有することから,近年精力的に研究が進められている。PSCは有機-無機ハイブリッド材料でペロブスカイト結晶構造を持つ光吸収層を用い,従来のシリコン系太陽電池に匹敵する高い光電変換効率を示しており,将来のエネルギー技術における有力な選択肢と位置づけられている。
しかしながら,これの次世代太陽電池の実用化に向けては,依然として複数の技術的課題が残されている。主な課題としては,長期的な動作安定性の確保,ならびにスケーラブルな製造プロセスの最適化が挙げられる。中でも,耐久性は実用化に向けた最も重要なボトルネックとして広く認識されている。劣化の要因は光活性層材料の本質的な不安定性のみならず,動作環境下における電極材料の化学的不安定性にも起因する。たとえばPSCにおいては,ペロブスカイト層に含まれるヨウ素が銀の酸化を引き起こすことから,銀を用いた背面電極は適切でない場合がある。
これらの課題を克服する手段として,カーボンナノチューブ(CNT)を用いた電極が注目されている。CNTは優れた化学的・機械的安定性を有し,軽量かつ透明であることから,代替電極材料として極めて有望である。CNTは炭素原子のみから構成される円筒状のナノ構造体であり,フラーレンに代表されるナノカーボン材料群に属する。飯島澄男によって発見されて以来,材料科学およびナノテクノロジーの多様な分野で集中的な研究が進められてきた。CNTを薄膜化することにより,柔軟性・透明性・導電性を兼ね備えた電極の形成が可能となる。特に単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用いた透明薄膜電極は,デバイスの耐久性および全体的な性能向上に大きく寄与する可能性がある。
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