月刊OPTRONICS 特集序文公開

スズペロブスカイト太陽電池の性能向上に知見

著者:筑波大学 丸本一弘

1 はじめに

有機-無機ハイブリッド型ペロブスカイト太陽電池(PSC)は,低コスト,高効率,柔軟性,タンデム太陽電池への応用を含む幅広い応用範囲から,次世代太陽電池として有望である。光エネルギー変換効率(PCE)は既に26%を超えており,これは最先端の結晶シリコン太陽電池に匹敵する。しかし,従来のPb系ペロブスカイトに含まれるPbの毒性が,PSCの実用化への障害となっている。そのため,Sn,Ge,Bi,Cuなど,Pbに代わる低毒性の物質が提案されている。その中でもSn系ペロブスカイトは,理想的な光学バンドギャップを持つため,高いPCEを実現する可能性が有り,注目されている。しかし,Sn系PSCはSn2+が酸化されやすく,Sn系ペロブスカイトのp 型ドーピングが生じるためPCEが低く,安定性や再現性が低いという課題がある。Sn系PSCのSn2+ 酸化を抑制するため,さまざまな研究が行なわれ,現在,図1(a)に示すような逆構造型のSn系PSCにおいて,PCEは15%を超えている。しかし,Pb系PSCのPCEよりまだ低い課題がある。

ラドレスデン・ポッパー(RP)型Sn系ペロブスカイトを形成するスペーサーカチオン(大型有機カチオン)の導入は,Sn系PSCの安定性と効率を向上させる実用的な手法である。この導入は,結晶化プロセスを制御し,二次元(2D)層状構造を形成することで,熱安定性と疎水性を向上させ,Sn系ペロブスカイトのイオン移動と自己ドーピングを抑制するのに役立ち,10%を超えるPCEが報告されている。RPペロブスカイトの一般式はA′2An–1BnX3n+3 で表され,A′,A,B,Xはそれぞれスペーサーカチオン,小さな有機カチオン,金属カチオン,ハロゲンアニオンを表す。n →∞のとき,ペロブスカイト物質はABX3として広く知られる3 次元(3D)構造を示す(図1(b),左)。n=1の場合,ペロブスカイト物質は,図1(b)の右側に示すように,2 次元構造を示す。1+)(図1(c)),2-フェニルエチルアンモニウム(PEA+)(図1(d))が知られている。さらなる性能向上のため,RP Sn系PSCのデバイス動作中の電荷状態を微視的な視点から理解することは重要であるが,これまで報告はない。

電子スピン共鳴(ESR)分光法は,試料内部の電荷状態を分子レベルで非破壊かつ高感度に観測する手段であり,電子デバイスやその材料の特性を調べるための有用な手法であり,様々な有機電子デバイスの研究に用いられている。PSCに関しては,これまでPb系PSCに関するESR研究が報告されている。しかし,Sn系PSC,特にRP Sn系PSCの電荷状態とその性能への影響を解明する知見はまだ不十分である。

本稿では,オペランドESR法を用いて,RP Sn系PSCの電荷状態とデバイス性能への影響の研究成果について紹介する。(BA0.5PEA0.52FA3Sn4I13 ペロブスカイト(FAはホルムアミジニウムカチオン)とポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)正孔輸送層(HTL)を含むPSCとその薄膜サンプルについて,暗状態と光照射下でESR測定を行なった。その結果,暗状態において,PEDOT:PSS 層からペロブスカイト層への正孔拡散がこれらの層の積層化によって生じ,PEDOT:PSS/(BA0.5PEA0.52FA3Sn4I13界面に電子障壁が形成されることが分かった。さらに,光照射下でペロブスカイトからPEDOT:PSSへの電子移動が観察され,界面での電子障壁が増強することも明らかになった。この電子障壁の増強は,界面パッシベーションと電荷キャリア選択性を改善し,RP Sn系PSCの性能向上に寄与することが解明された。これらの知見は,さらなる高効率や高耐久性を持つSn系PSCの開発にとって非常に重要である。

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