先ほど,面発光レーザーを実現するうえで3つのアプローチを挙げましたが,そのうちの波長の再現性ということでは,1992年に機械的に波長を合わせる実験をしました。その後MEMSをベースとした波長掃引型面発光レ ーザーが開発されています。santec㈱が面発光レーザーを光源とした波長掃引型OCT(Optical Coherent Tomography)を製品化しています。
─面発光レーザー市場も拡大傾向にあるのでしょうか?
レーザーの世界市場は約100億ドルとされていますけれども,そのうち,2割程度を半導体レーザー市場が占めているとされています。面発光レーザーはそれに比べても少ないわけですけど,2020年辺りから伸びてきて, 2030年頃には120億ドル市場になると予測されています。
さらに,用途別の面発光レーザーモジュール市場を見てみますと,2025 年にはデータ通信が最も多く(120 億ドル),次いでスマートフォン(80億ドル),保安(80億ドル)になっています。その他にはガスの検知や加工があり,LiDARやOCTの市場で伸びると予測されています。
ガートナー社が出しているハイプ・サイクルというものがありますが,私も面発光レーザーのハイプ・サイクルを作ってみました。私のサイクルは時間経過とともに,どのようなアプリケーションが立ち上がり,産業化につながっていくのかを表したものです。
このハイプ・サイクルでは,初期の方には原子時計が位置しています。上向いているのが,LiDARとセンシング,それにパワーレーザーです。成熟期にある,いわゆるピーク期に位置しているのは,Face Recognitionです。 PC用マウスはLEDに随分と置き換えが進みましたが,ハイグレードなマウスにはまだまだ面発光レーザーが採用されています。産業化では光インターコネクトやLANがあります。
─面発光レーザーの将来をどのように見られていらっしゃいますか?
RGBの面発光レーザーも実現できつつありますので,将来的にはヘッドマウントディスプレイへの採用が期待できます。また,材料面では有機系やオキサイドの発展に期待しています。また,コヒーレントレーザーアレイやビームステアリングの開発も進んでいますので,その実用化も注目ですし,面発光レーザーの出力が10 kWを超えてくると,よりスマートなシステムのもので加工するという用途も見えてくるでしょう。研究というのは,幹になるようなものに取り組むのが良いわけですが,最初から幹があるわけではなく,その芽が必要です。ですから,その芽を研究して,幹にして,システム化した大規模産業につながるのが理想的です。青色発光ダイオードが良い例ですが,面発光レーザーの予測値4兆円規模ながらもそのような方向に向かっています。◇
(月刊OPTRONICS 2023年12月号)