現在,銅の加工が注目されていますが,その加工に対応するレーザーとして,青色レーザーを開発しています。当社が取り組んでいるInP,もしくはGaAsの半導体レーザーでは出力されない領域ですので,この分野ではGaN半導体レーザーのNo.1企業である日亜化学工業さんと共同で進めてきました。青色光は銅に対する光吸収率が近赤外(IR)光に比べて高いことが示されています。
我々は,さらに安定した加工を追求するために,青色レーザーとIRファイバーレーザーを組み合わせたハイブリッドレーザーを開発しています。青色レーザーはIRファイバーレーザーと比較してビーム径が広いので,この広い口径を利用して材料の先行加熱に利用し,IRファイバーレーザーで深い溶け込み加工を行ないます。
銅加工の用途は色々とあります。リチウムイオン電池やモーターなどです。我々はコイル巻き線機メーカーと共同で,EV向けモーターの銅溶接向けにハイブリッドレーザー加工機の開発を発表しました。さらに用途を増やしていくためのレーザー技術の開発も進めています。例えば,ボルトや超音波などによる従来の接合法をレーザー加工法に置き換えていくような技術開発です。
昨年11月には,愛知県豊田市にもアプリケーションラボ『CALL(Chubu Advanced Laser Lab)』を設置しました。中部地区は自動車産業の集積地ですので,重要な拠点の一つであり,多くのお客様との共創拠点としてフル稼働しております。
─研究部門と事業部門が上手くマッチングしているという印象を受けました
研究と事業の垣根を越える例として,昨年4月より社長直轄のプロジェクトもスタートしています。このプロジェクトでは,広帯域長距離伝送光部品と次世代シリコンフォトニクス融合高性能デバイスの開発から量産化の検討を行ないます。よりスピーディに動けるような組織体制としているのが特長です。
また,今年の4月には,東北大学とのフォトニクス分野における連携拠点を設置し,産学連携による将来の革新的技術を開発していくとともに,人材育成も行なっていきます。このような取り組みを進めていく中で,各事業のフォーカスに合わせて,将来を見据えながら盛り立てていくのが,研究の役割だと思っています。
─エレクトロニクス実装学会の会長に就任されました,背景を教えてください
東京大学の中野義昭先生からこの5月の総会で会長職を引き継ぎました。エレクトロニクス実装学会は1998 年に旧「ハイブリッドマイクロエレクトロニクス協会」と旧「プリント回路学会」が合併して誕生した国内最大級のエレクトロニクス実装技術に関わる学会です。当社は銅箔製品に関連してプリント回路学会の時代から活動をしてきました。この分野では光電融合やCPOの議論に絡んで多くのフォトニクス技術の展開が期待されており,当社はその面でも学会活動を推進しております。
(月刊OPTRONICS 2023年07月号)