(夏山)大事なのは人とのかかわりなんですね。レーザーだけとなるとU-suke先生とも知り合っていなかったと思うんです。産業用のレーザーは鉄板を切るとかパーツを造るとか役目がはっきりしていますが,民生用というのは結論を言うと感動だったり,癒しだったり,喜びだったり,そういうことにも繋がると思うんです。もちろん最初から絵本造りをやろうと思っていたわけではないんですが,人とのかかわりで,なるほどそこまでいくんだなと(笑)。
(U-suke)LDFと拓殖大学工学部デザイン学科との共同研究事業として,今年は3年生の演習を実施したのですが,テーマは,障がいのある方が働いている福祉サービス事務所の新たな木工製品のアイデアを学生が考えるというものです。工房のセールスポイントである手磨きと,レーザーカッターを組み合わせた商品を考えてもらい,優秀作品として例えばスマホスタンドや子供向けの玩具,動物の立体パネルやキーリングホルダーといったものが選ばれました。新しい商品の開発によって,施設の利用者の人たちの収益にもなることも目指しています。作業ではバンドソーも使うので,作業しやすいように当たり線をレーザーで付けることもやりました。今回の試みにはデジタルとアナログを上手く融合させるという部分もあったと思います。
LDFが拓殖大学の産学連携研究センターに入っていることで,学生たちはレーザーの使い方を学べますし,今回の演習を通じて障がい者の方と一緒に作業をするという経験もできます。産業交流展(東京都,東京商工会議所などが主催する中小企業によるトレードショー)のLDFブースでも,学生たちが積極的に参加して今回の企画商品をPRしていました。
─どうしたらレーザーがもっと日常に使われるようになると思われますか?
(竹末)レーザー加工機は少し高くて技術を要しますけど,昔からあるカッターやはさみと同じような道具だと思います。例えば昔からの編み機や縫物をする手のように,レーザーもそれらの一つであって,特別なものではないですよね。
(夏山)知恵が生まれたり,人と繋がったりといったことができていけば,別にレーザーじゃなくて,手でやってもいいんです。先ほどの伊勢紙型が今でも手でやっているように,手でも機械でも,やりたい方法でやればいいのであって,何でもできる人はどんな道具を使っても何でもできるんです(笑)。
産業分野はともかく,民間分野はレーザー加工機を単に売るだけじゃだめなんですね。包丁だってレシピや食材が必要ですし,もっと言えば美味しい料理をする料理人や雰囲気も大切です。ですから包丁というのはツールにすぎない,もっと大事なものが他にあるわけです。それは皆さんで考えてください,とういうことです。
20~30年前と違って,今は個人向けのレーザー加工機は本当に手軽な価格で購入できるようになりました。簡単な製品なのでプロとしては使えませんが,ものづくりには欠かせないツールになってきました。
近々発表になりますが,AIによる視覚化アルゴリズムを搭載した内蔵の超広角カメラを駆使して,手描きの絵や文字に沿って自動的にレーザーの軌道をプログラムしたり,専用ソフトウエア画面でデザインの完成予想図がリアルタイムで表示したりすることができる小型レーザー加工機が,フルシステムで60万円程度の低価格で発売になります。このくらいになると,グラフィックソフトやドライバーソフトを使用できなくても,まさに,小学生でも,おじいちゃん,おばあちゃんでもものづくりを楽しめるようになってきます。是非,皆さんのやりたいことを,レーザーを使って実現してみてください。
(月刊OPTRONICS 2020年1月号)