人工衛星が増え続ける中,衛軌道上にあるスペースデブリへの対応が喫緊の課題となっているが,これに対し日本からレーザーを使ったベンチャー「Orbital Lasers」が立ち上がった。
果たしてレーザーはデブリ問題の最適解となるのか。同社CEOの福島 忠徳氏に話を聞いた。
―御社はこれまでスカパーJSAT*の社内ベンチャーでしたが,独立された経緯について教えてください。(*公開当時,社名を間違えておりました。お詫びして訂正いたします)
2019年に社内ベンチャーを立ち上げた時からゴールについて色々考えていました。技術的な蓋然性が高まるとともに,メンバーが増えてきて,理化学研究所に設置したチームの期限が迫っていました。そして,宇宙の技術と事業開発は長いフェーズとなり,開発コストも大きいため,一社ではリスクを取り切れませんので,外部の投資家から資金調達を受けやすいようにカーブアウトベンチャーという形で会社を創りました。
会社を創った方が会社としての意思の強さが出ると思いました。会社のプロジェクトだとどこかで取り潰しになる可能性もありますが,今はそうじゃありません。我々も前の会社を辞めて事業にフルコミットをしている,人生かけてやっていると言えることは,対外的にも壮大な計画を本気でやるんだという意思が伝わります。もちろんファイナンスやテクニカルな面でマイナスな部分もありますが,覚悟を示したことは大きいと思います。
当然,背景にはベースとなる技術的な成果があって,絵に描いた餅から本当に実現できるという確信があっての話になります。実際に手を動かしてものを積み重ねていくうちに,あのなら人これができるねってなるんです。そうすると,そうした人たちが「面白そうだし一緒にやりたい」という具合にチームが大きくなって,今では社員は役員を含めて約20人になっています。
―前回取材した2020年の頃と宇宙デブリの状況は変わっていますか?
国際機関の意識が徐々に変わってきました。デブリの問題は明らかなので,やるかやらないかではなく,どうやってやるかという段階だと思っています。つまり,どのテクノロジーが一番安く上がるのかが重要な要素になってきました。我々以外にも,デブリをロボットアームで捕まえたり,地上からレーザーで動かしたり,いろんな技術が提案されています。
理化学研究所の戎崎先生(当時理化学研究所客員主任研究員 戎崎俊一氏)が2015年頃に,宇宙で大きいレーザーを使って,小さいデブリを打ち落とすのが環境に一番いい方法だろうと書かれていますが,これが将来的に実現すればコストパフォーマンスが良いとのNASAの報告にもあります。そうなった場合,エンジニアリング的にはまだ課題はありますが,そのような宇宙レーザーの未来に一番近い位置にはいると自負しています。それでも実現はまだ遠いですが(笑)。