3. 原理
本素子は3枚のホモジニアス配向ネマチック液晶素子で構成されている。本液晶素子は図2に示す通り,液晶材料を透明電極,配向膜を成膜した基板で挟み込み,配向方向を一様な方向に配向させた液晶素子である。この時,液晶素子は電圧によって制御可能な可変波長板として機能し,分子が配向している可制御軸aの方向の偏光の位相を,印加した交流電圧の振幅,もしくは周波数によって制御することができる。本液晶素子は誘電異方性が正の液晶を用いた一軸性複屈折素子であるため,可制御軸を水平方向に向けて設置した場合のジョーンズマトリクスは,
とあらわされる。複屈折位相差xは電圧の振幅Vと周波数fに対応する関数x(V, f )として与えられ,製作後に較正試験によって求められる。その結果の一例が図3である。これは,正弦波電圧で駆動した時のxの変化を駆動電圧の振幅と周波数毎に整理したもので,振幅制御でも周波数制御でも,2π以上の制御量が得られることが分かる。
この液晶素子を3枚用意し,図4に示すように,入射偏光である直線偏光に対し,各液晶の可制御軸を入射側から順に平行,45°,平行になるように順に配置したものがPMCである。これらの液晶素子によって与えられる複屈折位相差は,光源に近い側から順にξi, ηi,およびζiとして与えられ,いずれも駆動電圧の振幅および周波数の関数である。また,液晶の分割は,μmオーダーの加工ができる転写,エッチング技術によって,電極パターンを同心円状,放射状等,任意の形状でパターニングでき,図4では同心円状,放射状に計32分割されている。