東大ら,ロドプシンの光利用効率化システムを発見

東京大学,理化学研究所,海洋研究開発機構,東北大学,生産開発科学研究所,東京農業大学は,ロドプシンの新たな光利用効率化システムを報告した(ニュースリリース)。

ロドプシンは膜タンパク質と色素の一種であるレチナールから構成されており,レチナールが光を受容すると,水素イオンや塩化物イオン,ナトリウムイオンなどを輸送する光駆動型イオンポンプとして機能する。現在では,海洋表層に生息する細菌の半数以上がロドプシン遺伝子を保有し,特定の海域ではロドプシンは光合成に匹敵するほどの光エネルギーを受容していると試算されている。

2023年,海洋細菌を用いた実験から,海洋環境に最も広く分布するロドプシンであるプロテオロドプシン(PR)がレチナールだけでなくカロテノイドとも結合することを発見した。このカロテノイドは,自身が受容した光エネルギーをレチナールに渡すことで,PRを駆動させる集光アンテナとして機能する。

この働きにより,PRの利用できる光の波長域が拡大し,光利用効率が大幅に向上することが示された。このようなロドプシンの光利用効率化システムは,海洋細菌の生残にとって有利に働くことが予想されるが,これまで知られていたのは集光アンテナという仕組みだけだった。

研究グループは,①PR以外のロドプシンも集光アンテナを持つのか②ロドプシンには集光アンテナ以外にも光利用効率を高める仕組みが存在するのかの検証を行なった。海洋地球観測船「みらい」による研究航海で,表層海水から分離された海洋細菌株を対象とし,PR遺伝子(NM-R1),および塩化物イオン輸送ロドプシン遺伝子(NM-R3)を大腸菌に異種発現させ,タンパク質を精製した。

このタンパク質に,S1-08T株から抽出したカロテノイドを添加し再精製した結果,いずれのロドプシンもカロテノイドと結合することが確認された。さらに詳細な分光・構造解析からNM-R3と結合したカロテノイドが集光アンテナとして機能すること,そして他の集光アンテナとは異なり縦向きに結合することが明らかになった。

また,NM-R1と結合したカロテノイドは,集光アンテナとしての役割に加え光サイクルを加速させることで,水素イオンの輸送量を増加させる,光サイクル加速色素としても機能することを発見した。

加えて,メタトランスクリプトームデータを用いた解析から,このような光利用効率化システムにより,ロドプシンを保有する海洋細菌がより光量の少ない深海にまで生息域を広げている可能性を示した。

研究グループは,ロドプシンの光利用効率化システムが細菌の光環境適応を助け,より深層でも光を受容できる可能性を示したとしている。

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