矢野経済研究所は,2024年下期の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2024年の偏光板世界市場(メーカー生産量ベース)は,前年比105.3%の59,430万m2と予測した。偏光板市場は,面積効果が大きいTVパネル向け偏光板が市場を牽引している。
2024年はパリオリンピック・パラリンピックやUEFA EURO2024(サッカー欧州選手権)等,EUでスポーツイベントが開催されたことで,在庫不足に備えた生産需要などでTVパネルの生産量が拡大したことが好材料となった。
そうしたことから,2024年第2,3四半期(4月~9月)までの偏光板世界市場は需要量・生産量共に高水準を維持した。2024年10月よりTVパネルの生産稼働率低下がみられたが,11月から中国TVパネルメーカーの稼働率は再び80%台まで上昇している。
また,関税改定対策などに向けた前倒し需要が動いているほか,2025年には中国政府からの消費奨励政策などのサポートで,中国TVパネルメーカーは一定程度の稼働率を維持出来る可能性が高いと予測した。
将来展望については,2025年の偏光板世界市場は,前年比103.0%の61,215万m2まで拡大すると予測した。2025年1月,中国では春節連休もあり,一時的にディスプレーパネルの生産稼働率は低下する見込み。休み期間を10日以内に抑えるか,約2週間連休とするかにより2月からの生産立ち上がりが変動するという。
また,中国政府からの消費奨励策など経済回復政策の一環として,スマートフォン等電子製品への消費を促す補助金政策などが発表され,中国国内でのディスプレーパネル生産拡大も期待されるため,中国の偏光板メーカーは一定程度の稼働率を維持すると予測した。
既に米国などの関税引き上げを見据えた仮需要が動き出しているものの,2025年の懸念要素としてはオリンピック・パラリンピックや欧州でのスポーツイベントなどの好材料が存在しないため,TVセット需要がそこまで高まらない可能性があり,偏光板世界市場の伸び率は前年を下回る見込みだとしている。