京都大学の研究グループは,フォトニック結晶レーザーの最近における様々な進展(未発表の極最近の成果をも含む)に関する総説論文を発表した(ニュースリリース)。
Society 5.0におけるスマートモビリティ(=ロボットや車の自動運転等)やスマート製造(=デジタル化による自動的かつ効率的なものづくり)の実現に向け,既存の半導体レーザーの性能や,CO2レーザー,ファイバーレーザー等の大型レーザーのサイズや効率,コストがボトルネックとなっている。
そこで研究グループは,大型レーザーに匹敵する高輝度性を有し,かつ,外部光学系等を用いることなくビーム走査や様々なビームの生成が可能な「フォトニック結晶レーザー(PCSEL)」の研究開発を進めてきた。
この総説論文では,フォトニック結晶レーザーの高輝度性,高機能性の最近の大幅な向上に加え,短パルス・高ピーク出力化,短波長化,さらには機械学習との融合によるスマート化などの最新動向を解説している。
さらに未発表の成果として,大面積(3mmΦ)フォトニック結晶レーザーのkW級の高ピーク出力パルス動作と,それによる金属表面へのレーザーカラーマーキングや,GaN系青色フォトニック結晶レーザーを用いた水中における距離センサー(LiDARセンサー)応用の成果についても紹介している。
今後,高輝度PCSELにおいては,現在,直径3mmのPCSELの10倍の面積をもつ,直径10mmのPCSELの開発を進めており,連続(CW)動作において,出力1kWという,大型レーザーに匹敵する光出力を期待している。
さらに将来,直径30mmという超大面積での完全単一モード動作が実現できると,10kW以上の連続出力かつ,輝度100~1000GWcm-2sr-1が実現し,大型レーザーをも凌駕する可能性もあるという。このような究極のPCSELが実現できると,宇宙応用(宇宙セイルの推進用光源),核融合のための光源,EUV露光装置の励起光源など,新たな分野への活用も期待される。
また,今回は詳細を述べていないものの,外部の光学系や駆動機構を用いることのない電子的2次元ビーム走査や多点出射を実現できる高機能PCSELの今後の展望として,短パルス・高ピーク出力化を図っていくことにより,自動車の自動運転に適用できるような長距離(>100m)のオール電子式の全く新しい LiDARの実現が期待されるという。
研究グループは,PCSELの今後の研究開発が益々加速するとともに,上記のみならず,幅広い応用分野へ波及し,超スマート社会の実現に貢献することが期待されるとしている。