矢野経済研究所は,協働ロボット世界市場を調査し,主要国の関連政策や支援制度,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2024年における協働ロボットの世界市場規模は,メーカー出荷台数ベースで前年比147.9%の9万2,496台の見込みだという。
国別に導入状況をみると,中国市場では,協働ロボットメーカー各社が自動車およびエレクトロニクス業界の中でも自動化があまり進んでいない中小企業を中心に営業を強化している様子である。また,非製造業においては,カフェのバリスタ用や飲食店の調理用,さらには医療や農業分野などの用途から引き合いが増加している。
欧州市場では,電気自動車の普及拡大に伴い,二次電池やエレクトロニクス部品を作る関連業界の生産量が増加する見込みで,その中でも人手作業に依存していた繰り返し作業を中心に,協働ロボットの提案強化が進んでいる。また,米中関係の悪化により米国への輸出環境が厳しくなった中国の協働ロボットのメーカーがターゲット対象市場を北米から欧州へ変更し,営業を強化しているという。
米州市場では,加速する人件費の上昇や原材料費の高騰により,自動車業界を中心に協働ロボットなどを通じた生産自動化のニーズが高まっている。また,協働ロボットのメーカー各社は,設備投資が拡大している自動車及び二次電池,半導体の業界を中心に営業を強化している。
非製造業向けでは,韓国のメーカーが飲食業界をターゲットに調理用やバリスタ用の協働ロボットシステムの営業を強化している。さらに,米国国内では,中国市場と同様に,マッサージ用途のロボットが注目され始めているという。
日本市場においては,製造業において自動化に向けたロボット導入の引き合いが増加している。世界の主要な協働ロボットメーカーが日本市場に参入し,業界や用途に特化した多様な仕様や価格の製品ラインアップを通じ,市場シェアの拡大に取り組んでいるという。
韓国市場では,協働ロボットの活用を拡大する動きが造船業において進展していることに加え,防衛産業の戦闘機製造工程や電線業界,スマート農業,病院の手術用,空港やカフェなど,さまざまな用途で導入事例が増えている。
近年,この調査で注目したICTとAI技術を組み合わせることで,人間と協働ロボットとの間での相互作用を可能とし,非定型の作業環境に適用できるような協働ロボットの研究・開発が進められているという。
そうした研究としては,IoT(センサー,データ収集)や無線・高速通信(データ送信),ビッグデータ・ディープラーニング(データ分析),ティーチングレス制御,動作教示(ティーチング)を効率化する技術,大規模言語モデル,デジタルツイン,模倣学習などの技術研究が進められているという。
これらの研究・開発により,協働ロボットのプログラミングや教示作業がより高度化し,同時に容易になる見込みだという。さらに,作業精度も向上し,協働ロボットの活用範囲がさらに広がることが期待される。協働ロボットをより高機能化・高精度化するAIソフトウェア技術こそが,協働ロボット市場の変革(ゲームチェンジャー)につながる手段になると考えるとしている。
将来展望については,製造業だけではなく非製造業においても,ロボットを活用した自動化の重要性が高まりつつある。AIやセンシング技術などの進化で,協働ロボットは高精度化・高性能化・高機能化していく見込みで,今後さらに導入業界や活用用途が拡大するものと考えるとしている。
2033年の協働ロボット世界市場規模(メーカー出荷台数ベース)は,2024年(見込)比で7.4倍となる68万1,021台まで増加するものと予測した。