JAXA,分光観測で複雑な広輝線の起源を明らかに

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,京都大学「せいめい望遠鏡」の分光装置KOOLS-IFUを用いてセイファート1銀河(明るい中心核と通常の銀河と明らかに異なる連続光や輝線を示す銀河)であるSDSS J1430+2303を1年に渡って分光観測し,複雑化したHα輝線(6300-6800 Å)の起源を明らかにした(ニュースリリース)。

2つの超大質量ブラックホール(SMBH)が軌道運動することで周囲に及ぼす影響が議論されている。今回の観測対象であるSDSS J1430+2303は,その中心に位置するSMBHに大量の物質が降着して非常に明るい連続光が生成され,照らされた原子や分子,イオンが様々な領域から輝線を放射している。

SMBHがバイナリ(連星系)を形成している兆候の一つに,SDSS J1430+2303で観測された光度変動周期の減衰がある。バイナリ軌道の周期が短縮していることでSMBHが合体するまで数年以内ということが示唆された。

最大規模の可視光の撮像分光観測であるSDSSによって分光されたHα領域のスペクトルは,セイファート1銀河の典型的な特徴を示していたが,近年になって活発化したHα輝線は,他に例を見ないほど複雑に広がったスペクトル(Central broad componentおよびDouble-peaked component)を示した。

研究グループは「せいめい望遠鏡」を用いて観測を1年に4度行ない,複雑なHα輝線が放射される領域を特定するために,連続光の変動の時間差を利用した。

その結果,Central broad componentはセイファート1銀河で観測できる幅の広がった輝線と同じ領域であることが明らかになり,Double-peaked componentはCentral broad component より内側に存在する降着円盤が起源である可能性が示された。

研究グループは,今後,さらに複雑なスペクトルが変動を起こす可能性もあるので,継続してSDSS J1430+2303を観測することでSMBHの合体に関する新たな知見を得たいとしている。

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