名古屋大学,豪クイーンズランド大学,早稲田大学,豪ニューサウスウェールズ大学は,適切な基板選択と電気化学的ミセル集積法を用いて,常温下で準安定相型メソポーラス半導体(CuTe2)の薄膜の合成に成功した(ニュースリリース)。
従来のCuTe2薄膜は,光エレクトロニクス材料への応用が期待されているが,熱的安定性が課題であり,常温下でも安定なCuTe2薄膜が望まれていた。
研究グループは,ポリマーミセルを用いるソフトテンプレート法と電気化学的手法によりCuTe2の結晶構造を制御しつつ,高品質で安定したCuTe2を低温と常圧下で合成する効果的な方法を開発した。
さらに,異なる温度でのCuTe2の化学組成の安定性を調べるため,金属電極の析出方法の検討,その場観察によって構造と化学的変化を評価した。また,合成したCuTe2半導体の光電子特性の調査を行なった。
この手法では,適切な基板選択とソフトテンプレート法を用いて,準安定相CuTe2半導体を合成した。ブロック共重合体が自己組織化することでポリマーミセルを形成し,メソポーラス半導体を合成するための基礎となる。
安定なミセルの利用,及び合成条件を変えることで,結晶性の制御を可能にし,電極の選択が,メソポーラス準安定相型CuTe2膜の成長を容易にすることを明らかにした。
特に,金属電極が,酸化または還元電位,pHレベル,および電解質組成などの電気化学反応条件に大きな影響を与えることが明らかになった。
各金属電極の化学反応性は,材料の構造,光学,および電気的特性を時間とともに変化させることが可能。実際,種々の電極上でメソポーラス型テルル銅半導体の合成に成功した。
アルミニウム電極上で合成した準安定相型メソポーラスCuTe2半導体はポリマーミセルのサイズに相当する16.8nmのメソ孔を有することを電子顕微鏡から確認した。メソポーラスCuTe2半導体で光センサーを作製し,様々な光を照射して,アルミニウム電極上で合成した準安定相型メソポーラスCuTe2薄膜の電気伝導性を測定した。
−10から+10Vの電圧範囲で応答を示し,疑似太陽光,緑色LED(16.8mW/cm2)および赤色LED(10.6mW/cm2)下で,顕著な応答を示した。この強い光吸収特性は,メソポーラスCuTe2薄膜のバンドギャップ(1.67eV)が後者のメソポーラスCuTe薄膜(2.35eV)よりも低いためと考えられるという。
研究グループは,光伝導素子,可調光センサー,および検出器などへの応用が期待でき,光エレクトロニクス分野のさらなる発展が期待できる成果だとしている。