北海道大学の研究グループは,太陽コロナの内部で働くニュートリノと光の相互作用「電弱ホール効果」を理論的に解明し,これがニュートリノのエネルギーを光のエネルギーに変換し,太陽コロナに多量の熱を供給することを示した(ニュースリリース)。
量子力学的な効果によってニュートリノと光の相互作用が生じるが,極めて弱い相互作用であり現実の物理現象には無関係であると見なされていた。つまり,ニュートリノは,太陽中心部でつくられるものの,太陽コロナや地球内部を素通りすると考えられてきた。
研究グループは,磁場中における電子系の特異な現象である量子ホール効果の理論を電弱ゲージ理論に拡張し,磁気プラズマ中における電子,光とニュートリノの相互作用を調べた。特に,相互作用の形や結合の大きさに特に重点を置いた。
ニュートリノは,光球内,太陽コロナや地球を素通りすると考えられてきたが,今回の研究により,ニュートリノは中心部でつくられた後,一部が,コロナを通過する際,光と軽いニュートリノに崩壊する(ただし,地球内部では従来と同じ)ことが明らかになった。
つまり,磁気プラズマ中におけるニュートリノと光の相互作用について,電弱ホール効果により,重いニュートリノが崩れて,軽いニュートリノと光になる(ニュートリノの光崩壊)という新たな相互作用「電弱ホール効果」の存在が明らかになった。
電弱ホール効果によって導かれるニュートリノの光遷移の振幅は,従来のものよりも20桁以上大きく,時空座標に対する特異な不変性を持つ。
これらの結果,ニュートリノの光崩壊が大きく増幅された。つまり,電弱統一理論において,ニュートリノと光の間には,極めて弱い相互作用だけが働くため,現実の物理現象には無関係であると見なされていたが,磁気プラズマ中ではそれほど弱くない相互作用がもたらされることが明らかになった。
ただし,この崩壊は,プラズマ中の光子の有効質量が,ニュートリノの質量差よりも小さい時に起こる。これは,太陽コロナで満たされ,光球の内部では満たされないことが必要条件となる。それゆえ,ニュートリノの光遷移は,太陽コロナ領域でだけ起き,光球の内部では発現しない。
ニュートリノの遷移で生じた太陽コロナ中の光は,周囲にある分子,原子,電子等に電磁相作用を通してエネルギー(熱)を与える。よって太陽コロナ領域は,高い温度となるのだという。
研究グループは,近い将来行なわれるであろう,大規模な測定機器を使っての検証に期待するとともに,今後の更なる研究が待たれるとしている。