OKIは,信越化学工業と共同で,信越化学が独自改良したQST基板からOKIのCFB技術を用いてGaN(窒化ガリウム)機能層のみを剥離し,異種材料基板へ接合する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
GaNデバイスは,電圧1,800ボルト(V)以上の高耐圧が求められるパワーデバイス,Beyond 5G向けの高周波デバイス,および高輝度なマイクロLEDディスプレーなど,高デバイス特性と低消費電力を両立する次世代デバイスとして注目されている。
特に縦型GaNパワーデバイスは,電気自動車の走行距離の延長や給電時間の短縮など基本性能を向上するデバイスとして,今後需要が大きく拡大することが期待されている。しかし,縦型GaNパワーデバイスの社会実装に向けては,大きく2つの課題,1つ目は生産性を向上するためのウエハーの大口径化,2つ目は大電流制御を可能にするための縦型導電の実現がある。
信越化学のQST基板は,GaNと熱膨張係数が同等であるため,反りやクラックの抑制が可能。この特性により,8インチ以上のウエハーでも高耐圧な厚膜GaNの結晶成長が可能となり,大口径化の課題を解決する。
一方,OKIのCFB技術は,このQST基板から高デバイス特性を維持した状態でGaN機能層のみを剥離することが可能。さらに,GaN結晶成長に必要な絶縁性バッファー層を除去し,オーミックコンタクトが可能な金属電極を介してさまざまな基板に接合することができるため,放熱性の高い導電性基板に接合することで,高放熱と縦型導電の両立を実現する。両社の技術により2つの課題が解決し,縦型GaNパワーデバイスの社会実装への道が大きく拓けた。
今後両社は,GaNデバイスを製造するユーザーに,信越化学がQST基板またはエピタキシャル基板を提供し,OKIがパートナーリングやライセンスによってCFB技術を提供することで,縦型GaNパワーデバイスの実現と普及に貢献するとしている。
またOKIは,CFB技術によって単一材料の枠を超えた付加価値を半導体デバイスに提供するとしている。