京都大学の研究グループは,フォトニック結晶レーザー(PCSEL)の連続動作状態での輝度を,CO2レーザー,固体レーザー,ファイバーレーザー等の大型レーザーに匹敵する値,1GWcm-2sr-1まで高めることに成功した(ニュースリリース)。
既存の半導体レーザーは,高出力時のビーム品質劣化により,高い輝度が得られないという本質的な欠点を抱えており,大型レーザーに匹敵する輝度を実現することが困難だった。
輝度は,単位面積,単位立体角当たりの光出力と定義される。金属等の物体の光による切断・加工(以後「光加工」)を行なうためには,1GWcm-2sr-1の輝度を実現する必要があった。
研究グループは,高出力・高ビーム品質(=高輝度)動作可能という特長を有する新たな半導体レーザーであるPCSELを1999年に発明して以来,輝度増大に取り組んできた。
最近,フォトニック結晶内部における光波の結合状態を精密制御することで,直径3mmのPCSELで50~100W級動作,輝度1GWcm-2sr-1の実現が可能であることを理論的に示した。さらに,直径10mmのPCSELにより,一桁高い出力,輝度も可能なことをも示した。
今回,研究グループは,こうした設計指針に基づく光波の結合状態の制御とともに,制御された光波結合状態を,光加工に必須な連続動作(発熱の影響を大きく受ける動作状態)においても維持可能な構造を導入した直径3mmのPCSELを開発した。
その結果,連続動作において,50W単一モード・狭ビーム出射角(0.05°)高ビーム品質動作を実現し,大型レーザーに匹敵する輝度(1GWcm-2sr-1)を世界で初めて達成することに成功した。
フォトニック結晶構造を,今回の設計のままで,面積を拡大する(あるいはアレイ化する)と高次モードが出現し,ビーム品質が劣化するが,面積拡大によるパワー増大で相殺可能なため,今回の輝度が維持可能だという。
なお,直径10mm(あるいはそれ以上)において,さらに,フォトニック結晶構造の微調整を行ない,結合係数の値をさらに適切に制御すると,基本モード動作を維持したまま,キロワット級(あるいはそれ以上の出力)動作も期待出来るという。
この場合,大型レーザーをも凌駕する完全単一モード,輝度 10GWcm-2sr-1以上をもつ半導体レーザーの実現が期待され,研究グループは,新たな分野への活用も期待されるとしている。