KDDI総合研究所と名古屋工業大学は,テラヘルツ帯の送受信機とマルチビームレンズアンテナを組み合わせた仮想化端末ハードウェア実証システムを開発し,送信機と2つの受信機との間で同時に,広帯域なデジタル信号を送受信することに成功した(ニュースリリース)。
Beyond 5G/6Gでは5Gの100倍の超高速・大容量通信を実現するために,広い周波数帯域を使えるテラヘルツ帯の活用に関する研究開発が始まっている。研究グループは,両者が提案する仮想化端末に関連し,2022年5月にテラヘルツ帯(300GHz帯)でビーム方向を変更可能なマルチビームレンズアンテナの開発に成功した。
一方,仮想化端末の実現に向けては,ユーザーの端末と複数の周辺デバイスとの間を超広帯域のテラヘルツ帯無線でつなぐ必要があった。
そこで研究グループは,テラヘルツ帯(300GHz帯)で広帯域信号を無線伝送する2組の送受信機と,ビーム方向を変更可能なマルチビームレンズアンテナとを組み合わせた,仮想化端末ハードウェア実証システムを開発した。
この実証システムでは,2台の送信機から入力された信号を1台の送信アンテナから異なる2方向へ向かうビームで送信し,それぞれの信号を2台の受信機で受信することで,4.8GHz帯域幅のQPSKデジタル変調信号を2信号同時に伝送可能とした。
マルチビームレンズアンテナは,60度の角度(アンテナ正面を0度とし,プラスマイナス30度)でビーム方向を変更できる。送信側と受信側の双方でビームを向かい合わせることで,QPSKデジタル変調信号の伝送に要求される伝送品質を達成した。
また,受信機の位置や向きが変わった場合でも送信側,受信側それぞれのアンテナで適切なビームへ切り替えることで信号の伝送品質を維持できることを確認した。
研究グループは,今後も送受信機の小型・軽量化や,さらに広い角度にビーム方向を変更可能なアンテナの開発を進めると共に,開発した送受信機やアンテナを用いて,仮想化端末の実現に向けてテラヘルツ帯を利用した実証実験を継続していくとしている。