富士キメラ総研は,スマートフォン向けが外部環境要因や製品需要の飽和を背景に落ち込む中,自動車やクロスリアリティ(XR)向けに注目が集まるイメージング&センシング関連の世界市場を調査し,その結果を「2023 イメージング&センシング関連市場総調査」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,イメージング&センシング関連市場(イメージング&センシング技術)で使用されるデバイス・部材・装置)は,2022年はスマートフォン向けが大きく落ち込んでいるものの,車載カメラとヘッドマウントディスプレー向けが好調であり,為替の影響も加わって,市場は拡大するとみている。
2024年以降,スマートフォン生産が回復することにより,小型カメラモジュールなど関連部材が伸びると予想する。加えて,自動運転に向けた高度ADASの普及に伴って,車載カメラモジュールや車載カメラ用レンズユニット,LiDARなどが大きく伸長するとみる。
さらに,XR分野では,大手メーカーの参入によるヘッドマウントディスプレーの生産拡大やコンシューマーへの普及が期待され,また,ビジネス用途で採用が広がる可能性があることから,VR用接眼レンズを始めとする関連品目が伸長するとみている。
光学ユニットは,2022年は,最大規模の小型カメラモジュールがスマートフォン市場の落ち込みを受けて伸び悩んでいるという。一方,自動運転レベルの進展に伴って,車載カメラモジュールや車載カメラ用レンズユニット,LiDARなど車載関連品目が伸びているとする。
今後も高度な自動運転システムが普及することにより,車載関連は大きく伸びるとみている。また,マシンビジョンカメラやバーコードリーダーモジュールが,工場の自動化やECの普及により堅調に推移するとみており,2028年の市場は2021年比63.4%増を予測する。
光学部品は,規模の大きい光学レンズ(ガラス・プラスチック)において主要用途であるモバイル機器の多眼化需要が収まりつつあるものの,車載カバーガラスといった車載向けや赤外カメラ用レンズは好調だという。
今後は,スマートフォンカメラが多眼化から高機能化にシフトするため,採用されるレンズ枚数が増えると予想する。また,車載カメラモジュール,ヘッドアップディスプレーの伸長といった車載向けの増加もあり,光学レンズ(ガラス・プラスチック)が伸びるとみている。
さらに,車載カバーガラスは,CID(センターインフォメーションディスプレー)やメーターディスプレーの大型化に伴って曲面カバーガラスの採用が増えるほか,赤外カメラ用レンズが自動車用ナイトビジョンなどの市場の立ち上がりを受けて伸長するとており,2028年の市場は2021年比67.1%増を予測する。
この調査における各注目市場は以下の通り。
LiDAR(2D・3D)【光学ユニット】
LiDAR(Light Detection and Ranging)はレーザーを空間に照射することで空間情報をスキャンし,物体の有無などを認識するデバイス。水平方向のみのスキャンを行なう2D LiDAR,水平方向と垂直方向の両方を認識する3D LiDARを対象とした。
2D LiDARは,AGV(無人搬送車)や半導体搬送用OHT(天井走行式無人搬送車)などの産業向けが好調であることや,新型コロナウイルス感染症の影響による人手不足,ECサイトの需要増加を背景としたサービスロボット向けニーズの高まりを背景に伸長しているという。3D LiDARは,現状,スローモビリティ(低速で公道走行する小型車両)で採用が多い。2022年の市場は前年比32.7%増を見込む。
今後,2D LiDARは,引き続きAGVや半導体搬送用OHTなどの産業向けが伸長するとみる。3D LiDARは,自動運転車への搭載が進むとみる。高い自動運転レベルを実現するため,1台当たりの搭載個数が増加することから,自動運転車市場の拡大と連動して普及が進むとみている。2028年の市場は,2021年比18.0倍の9,900億円と予測した。
エリアイメージセンサー【半導体デバイス】
光を電気に変換し画像を取得するイメージセンサーのうち,エリア型でシリコンベースの製品を対象とした。2022年は,中国を中心にスマートフォン向けの需要が落ち込んでいる。しかし,スマートフォンにおけるカメラの大型化や高画質化が進んでいるため,ハイエンドモデルを中心にエリアイメージセンサーの単価は上昇しているという。
また,安全装備の搭載率上昇を背景とした自動車向けや中国における監視カメラ向けは底堅く,2022年の市場は前年比4.2%増を見込む。今後は,スマートフォン市場が回復に向かい,また,大型化や高画質化の進展などによって拡大が続くとみており,2028年の市場は2021年比32.8%増が予測される。
車載カバーガラス【光学部品】
車載ディスプレーの保護や光の反射,映り込みを防ぐ目的としてタッチパネルの最表面に設置するカバーガラスを対象とした。プラスチックカバーから,カバーガラスへの置き換えにより,市場は拡大しているという。
以前は欧州や北米,中国,韓国自動車メーカーでの採用が多かったものの,2021年以降,日系自動車メーカーでも採用が増加しており,2022年の市場は前年比39.6%増を見込んでいる。
現在は,大半が平面タイプだが,自動車インテリアの変化に伴って,曲面カバーガラスのニーズが高まっているという。曲面カバーガラスは高単価であるため,ハイエンド車種の中でもより上位車種での搭載が中心だが,今後は,CIDやメーターディスプレーの大型化に伴って曲面カバーガラスの採用が増加し,市場は拡大するとみらている。
VR用接眼レンズ【光学部品】
ヘッドマウントディスプレー向けの樹脂により成型されるプラスチックレンズを対象とした。ヘッドマウントディスプレーの市場に影響を受ける。
2022年は,Meta Quest 2(Meta Platforms)が大きく伸長した前年に比べてヘッドマウントディスプレーの伸びは緩やかであるものの,需要は底堅いとし,VR用接眼レンズの市場も拡大を予想する。
今後は,デバイスの薄型化や小型化に伴って,現在主流のフレネルレンズから,高単価のパンケーキレンズにシフトすると予想する。また,2023年にはPlayStation VR2(ソニー・インタラクティブエンターテインメント)が発売されるほか,中長期にはAppleやMeta Platformsの新機種発売も予想され,ヘッドマウントディスプレーの伸びに伴い,2028年に向けて市場拡大が続くとみている。