京大,木星に超大型の衝突閃光現象を発見

京都大学の研究グループは,2021年10月15日22時14分(日本時間)に,木星大気圏突入による巨大閃光現象「火球」を狙って観測することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

太陽系最大の惑星である木星は,その強大な重力によって周囲の小天体を引き寄せ,しばしば衝突を引き起こしている。太陽系形成時の「化石」とも言えるこうした外縁部の小天体群の衝突閃光の観測は,これらの小天体が木星軌道付近にどの程度存在するのかを知る機会となる。

しかし,衝突閃光は継続時間がせいぜい数秒程度かつ極めて稀な現象であり,地球上から観測された衝突閃光は全てアマチュア天文家の惑星動画観測によって偶然発見されたものに限られ,閃光検出に特化した観測装置によって閃光が検出された例はなく,閃光の特性については不明な点が数多く残っていた。

研究グループは,短時間で発生する時間変動現象を観測することに特化した超小型観測システム,Planetary ObservatioN Camera for Optical Transient Surveys(PONCOTS:ポンコツ)を開発した。これは口径0.28mの市販の望遠鏡に3台のCMOSビデオカメラを装着し,可視域で最大3波長での同時動画観測を実現する,移動可能な観測装置。

京都大学に設置し,木星のモニタ観測を開始し,2021年10月15日に閃光現象を発見した。閃光現象は肉眼では確認できるものではないが,国内外3人のアマチュア天文家が同じタイミングで同じ閃光を観測していたことが判明した。

閃光発生当時,PONCOTSでは2台のCMOSカメラが稼働していたため,閃光を2波長で観測することに成功した。さらに画像に写りこんでいたゴースト像を利用することで,これら2波長とは異なる,別の1波長での閃光の動画データを得ることに成功した。計3波長で閃光の同時観測に成功したのは史上初めてのことだという。

この動画データから,閃光を司る衝突によって放出されたエネルギーが過去に地上から観測された木星閃光現象と比較しても10倍程度大きく,1908年に地球で発生した,「ツングースカ大爆発」とよばれる小天体爆発のエネルギーに匹敵することが判明した。

この発見は,木星に衝突していると推定される太陽系外縁部の小天体が豊富に存在することを示唆し,さらに地球のような大気を持った天体への小天体衝突の際のリスクについて新たな知見を与えるもの。

研究グループは今回のPONCOTSの発見によって,衝突閃光の観測的研究は全く新しい段階に到達したとしている。

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