産総研,撮像素子で中赤外レーザーのビーム径計測

産業技術総合研究所(産総研)は,可視光用半導体撮像素子を用いた中赤外線レーザーのビーム径計測技術を開発した(ニュースリリース)。

近年,材料加工や先端医療などで,中赤外線レーザーの利用が進んでおり,レーザーのビーム径の計測・管理が不可欠だが,中赤外線のビーム径測定は容易ではなく,これまで開発されてきた方法も,装置の大きさ(1辺10cm以上)や導入コスト(数百万円以上)などの課題があった。

研究では中赤外線レーザーの照射による熱によって励起される電子を信号源として利用し,光励起される電子をノイズ源とした。半導体撮像素子の受光面を測定対象の中赤外線レーザーでスポット加熱し,その熱によって励起される電子の分布を画像化して入射レーザービームの強度分布を計測する。

まず,測定対象の中赤外線レーザーを撮像素子の受光面に向け照射する。受光面前面にはゲルマニウム製短波長カットフィルターを設置し,ノイズ源となる周囲の可視光を遮断し中赤外線レーザーのみを透過させる。

フィルターを透過したレーザーは撮像素子内で吸収され,レーザービーム断面の強度分布に応じた温度分布を生成する。撮像素子の各画素では,温度に応じた熱エネルギーによって価電子帯から伝導体へ電子が励起される。これらの電子を各画素で取得することで,熱励起電子の空間分布の画像が得られる。

開発した中赤外レーザーのビーム径計測装置は,CMOS撮像素子を用いた。受光部に出力3Wの炭酸ガスレーザー(波長10.6µm)を照射すると,照射開始時は信号が現れないが,照射し続けるとともに撮像素子が加熱され,ビーム入射位置を中心とするスポット状の信号分布が得られた。

次に,ピンホール走査法を用いて測定したレーザーの強度分布と,取得した熱励起電子の分布との関係を調べた。その結果,実験に使用した撮像素子では,熱励起電子の分布幅はレーザーのビーム径のおよそ1.5倍となることが分かった。この値はレーザーの入射開始から約20秒間にわたって維持された。

熱励起電子の分布幅とレーザービーム径の倍率が一定であれば,熱励起電子の分布幅から入射したレーザーのビーム径を逆算できる。つまり,ビーム径計測に使用する撮像素子について,予めレーザーと熱励起電子の分布の相関が成り立つレーザーパワーやビーム径の範囲を評価しておくことで,その範囲内で任意のレーザービーム径を推定できることを示す。

この成果は従来技術に対し,装置の設置面積をおよそ1/4,コストをおよそ1/10にでき,ミラーやレンズの調整を伴うビームアライメント作業の簡便化・効率化にも有効だとする。研究グループは今後,ビーム径の計測精度の評価を進めるとともに,任意のビーム形状への適用性を検討するとしている。

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