名古屋大学,国立病院機構名古屋医療センター,アポロ技研株式会社,フジプリグループ,アイディーネットは,新型コロナウイルスを不活化できる卓上型のエアカーテン装置を開発した(ニュースリリース)。
ウイルス感染予防策としてエアカーテン(空気壁)で空間を遮断するには,エアカーテンの強度を長距離にわたって持続させる必要がある。
静止空気中に向けて空気をノズルから噴出させてエアカーテンを生成する場合,一般に噴出気流の速度が低下し,エアカーテンは崩壊し,エアロゾルやウイルスなどの遮断効果を急速に喪失する。崩壊したエアカーテンは強い拡散性を持つため,ウイルスを空間中に撒き散らす恐れがあり,逆効果をもたらすことになる。
そこで研究グループは,後端を切断した翼型(切断翼)をノズル内部に搭載することにより,気流のブースト効果(カムテールの空力特性)を発現させ,エアカーテン気流の持続力を高め,その距離を延伸することに成功した。
エアカーテン気流による,呼気に含まれるエアロゾル粒子の遮断効果を実験で検証した結果,エアロゾルはエアカーテン装置の反対側に到達しないことが判った。採血時を想定してエアカーテン気流を横切るように腕を配置した場合においても,エアロゾルの遮断効果を確認した。
また,波長280nmの深紫外線は,新型コロナウイルスの不活化に有用であることが報告されている。開発したウイルス不活化装置は,この波長の深紫外線LEDを搭載し,装置内に導かれる使用済みエアカーテン気流に深紫外線を照射してウイルスを不活化する。新型コロナウイルスを用いた実験を実施したところ,ウイルスを検出限界まで不活化できることを確認したという。
既存の一般的な空気清浄機には,HEPAフィルタが搭載されている。HEPAフィルタは,直径0.3μm以上の粒子に対して捕集率99.97%を実現するフィルタと定義されている。ただし,HEPA フィルタにはウイルスを含む塵やほこりが堆積するため,定期的な交換が必要となる。
一方で,エアカーテン気流に深紫外線を直接照射する今回の装置は,フィルタを必要としないので,圧力損失を低減でき,送風機の小型化と騒音低減を実現できるとする。さらに,メンテナンス間隔はLEDの寿命に相当する10000時間以上(350mA 駆動時)であり,長期連続稼働が可能だとしている。