愛媛大ら,ナノワイヤから強い第二高調波を発生

愛媛大学とスウェーデン リンショーピン大,中国科学院上海技術物理研究所は,GaAsナノワイヤ中の準安定な六方晶の結晶構造を持つ極微細領域において,安定な立方晶部位よりも約7倍の強力な第二高調波発生が得られることを見出した(ニュースリリース)。

半導体GaAsはセンサーやレーザーの材料として主に使用されている。これに波長変換機能を持たせることができれば,これらのデバイス内部で所望の色へ光を調節するなど,さらに機能の充実した次世代デバイスの開発が期待できる。また,極微細なナノスケール結晶でこれが実現すれば,その集積化も容易になり,小型化,省電力化も見込むことができる。

ナノワイヤは直径数100nm以下の針状結晶で,GaAsナノワイヤはその一本一本が上述のデバイスとして動作することが知られている。GaAsナノワイヤ結晶中には,結晶の作り方によって安定な立方晶だけでなく準安定な六方晶が形成される。

この中で成長困難で不安定な準安定相の六方晶は,強い自発分極を持ち,より高効率な非線形光学応用が期待できる。一方これまで,GaAsナノワイヤでのこれら結晶相の混在が非線形光学特性に与える影響はよく知られていなかった。

実験では,愛媛大学が分子線エピタキシャル成長を用い,準安定な六方晶,安定な立方晶の両方を含むGaAsナノワイヤ試料を作製した。元の波長828nmの近赤外レーザー光を試料に照射することで波長414nmの2次高調波を得て,その効率を詳細に検討した。

顕微観察技術と合わせた発光の空間分布を詳細に検討することで,ナノワイヤ中のさらに微細な部位に存在する六方晶GaAsにおける第二高調波発生変換効率が,同じワイヤ中の立方晶部位と比較して約7倍と大幅に向上することを発見した。

この現象は,準安定な六方晶が有する結晶の非対称性,これに起因する自発分極と強い内臓電位によって得られる強い非線形光学効果によるものであることが考えられるという。この結果から,光の波長以下の大きさを持つ半導体ナノワイヤが次世代の非線形光学応用にも有望な材料となることが示された。

研究グループはこの成果について,GaAsナノワイヤ中の結晶構造を変化させることでその非線形光学特性を制御し,フォトニクス材料としての機能拡大を提案するものだとしている。

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