JAISTら,電顕下で金属ナノ接点のヤング率測定

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と金沢大学は,(111)方位を軸とした金ナノ接点を引っ張る過程を透過型電子顕微鏡で観察しながら,等価ばね定数と電気伝導の同時に測定する手法(顕微メカニクス計測法)によって,金ナノ接点のヤング率がサイズに依存することを明らかにした(ニュースリリース)。

金属配線のサイズが数nmから原子スケールレベル(金属ナノワイヤ)になると,量子効果や表面効果によって物性が変化することが知られている。

金属ナノワイヤの電気伝導は,量子効果によって電子は特定の決められた状態しか取れなくなるためその状態数に応じた値になること,つまり,コンダクタンス量子数の整数倍になることが明らかになっている。

近年,センサーへの応用が期待されるナノ機械電気システムの開発が進められており,金属ナノワイヤを含むナノ材料のヤング率などといった機械的性質の理解が課題となっている。この解決に,例えば,透過型電子顕微鏡(TEM)にシリコン製カンチレバーを組み込んだ装置でヤング率が推量されている。しかし,この測定法は,定量性が十分でないと指摘されている。

研究グループは,原子配列を直接観察できる透過型電子顕微鏡(TEM)のホルダーに細長い水晶振動子(長辺振動水晶振動子(LER))を組み込んで,原子スケール物質の原子配列とその機械的強度の関係を明らかにする顕微メカニクス計測法を開発した。

この手法では,水晶振動子の共振周波数が,物質との接触で相互作用を感じることによって変化することを利用する。共振周波数の変化量は物質の等価バネ定数に対応するので,その変化量を精密計測すればナノスケール/原子スケールの物質の力学特性を精緻に解析できる。

水晶振動子の振動振幅は27pm(水素原子半径の約半分)で,TEMによる原子像がぼやけることはない。この手法は,従来の手法の問題点を克服しており,高精度測定を実現しているという。

研究では,(111)方位を軸とした金ナノ接点(金(111)ナノ接点)をLER先端と固定電極間に作製し,この金(111)ナノ接点を一定速度で引っ張りながら構造を観察し,同時に,その電気伝導,およびばね定数を測定した。

その結果,ヤング率はサイズが2nm以下になると,サイズが小さくなるとともに約80GPaから30GPaへと徐々に減少した。この結果から,最外層のヤング率が約22GPaと,バルク値(90GPa)の約1/4であることを見出した。

研究グループは,このような材料表面の強度は,ナノ電気機械システム(NEMS)の材料設計でも考慮すべき重要な特性である点で大きな成果だとしている。

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