2020年度の光産業調査結果がまとまる―情報通信分野がテレワークや5G効果で堅調

図1 光産業全出荷額の分野別推移

光産業技術振興協会は,2020年度の光産業全出荷額と国内生産額の調査結果を発表した。調査は今回,260社に対してアンケートを行ない,83社からの回答をもとに集計,さらに太陽光発電協会,日本照明工業会,電子情報技術産業協会,カメラ映像機器工業会などの協力も得てまとめたものとしている。

■情報通信分野がプラス成長
今回の調査結果のトピックの一つは,2020年度出荷額と国内生産額ともに情報通信分野がプラス成長になる見込みということ。同分野の2019年度の全出荷額実績は5,059億円でプラスに転じていたが,国内出荷額は3,800億円でマイナスの成長であった。2020年度はそれぞれ5,468億円,4,114億円と増加する見込みだ。この増加の要因は,新型コロナの影響によるテレワークの推進や5G関連の需要が活況を呈したことにある。

同分野のうち,特に好調だった製品分野は幹線・メトロ系の光伝送機器・装置と,光ファイバー増幅器,さらに発光素子,光受動部品,光ファイバー,光コネクタの光伝送用部品となっている。

■新型コロナの影響で苦戦したイメージセンサーや光センシング機器
イメージセンサーや光センシング機器は車載向けや監視カメラなどの旺盛な需要に支えられてこれまでプラス成長を続けてきたが,2020年度は一転して減少した。これまでの需給が落ち着いたものと見ることもできるが,新型コロナの影響による景気後退で停滞が進んだとも予想できる。しかしながら,2021年度予測では再び増加に転じるとされており,その動向が注目されている。
 
■自動車製造分野の低迷でレーザー加工機の需要に陰り
レーザー・光加工分野は2020年度の全出荷額見込みは6,217億円,国内生産額見込みは6,002億円となった。同製品分野は米中貿易摩擦の影響を受け,2019年度はマイナス成長となったが,さらに新型コロナが追い打ちをかけるかたちで,2020年度もマイナス成長が見込まれている。レーザー加工に関わる機械加工分野も低迷しており,特に自動車製造分野の動きが鈍化したことが影響したという。

このような状況の中,増加したのは炭酸ガスレーザー加工機と半導体レーザー直接加工機,ランプ・LD露光機となっている。このうち,炭酸ガスレーザー加工機は,特にビア加工機が増加したもようだ。現在,半導体不足が指摘されており,製造プロセスの見直しが迫られているという。逆に投資はさらに加速されるものと見られており,半導体製造にかかわるビア加工機やエキシマレーザーの需要増が期待されている。また,これに伴う微細加工用レーザーも増加するものと見られている。

■巣ごもり需要も苦戦が続くディスプレー・固体照明分野
さらに苦戦を強いられているのは,ディスプレー・固体照明分野だ。海外生産や海外メーカーの躍進により,2020年度出荷額と国内生産額ともにマイナス成長が続いている。製品別では巣ごもり需要により,4Kテレビや家庭用プロジェクターの販売が好調だったという。しかしながら,価格低下の激しい分野とあって金額の伸びは鈍化する傾向にある。

■太陽光発電分野は増加
太陽光発電分野では太陽光発電システムと太陽電池セル・モジュールを対象としている。太陽光発電分野は2014年度をピークに大きく需要が低迷したが,ここにきて需給のバランスが改善したという。太陽光発電システムの2020年度全出荷額見込みは,1兆5,423億円で,2019年度出荷額を超えた。太陽電池セル・モジュールについては,量と価格ともに安定基調にあり,2020年度の出荷額見込みは6,836億円になるとしている。

図2 光産業国内生産額の分野別推移

■2021年度出荷額・国内生産額予測
調査結果によれば,2021年度の光産業全出荷額は横ばい,国内生産額はやや増加と予測している。いまだ収束が見えない新型コロナウイルスの影響によって,先行きは不透明だが,新型コロナ禍で恩恵をもたらす分野もあり,光通信やセンシング,半導体産業を支えるレーザー加工などの伸びが期待されている。

なお,下に対象分野別の全出荷額と国内生産額の一覧表を掲載する。
光産業の全出荷額

光産業の国内生産額


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