三菱重工グループの三菱重工サーマルシステムズと北里大学は,酵素・尿素製剤処理,またはUV-C LED照射により,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を除去・不活性化できることを確認した(ニュースリリース)。
SARS-CoV-2の感染拡大が世界的規模となっている状況下において,室内空調システムに応用可能な空間からのウイルス除去・不活性化に関する研究は,室内におけるウイルスの感染制御に資する研究であり,社会的にも喫緊の課題であることから,今般の共同研究を実施したという。
この酵素・尿素製剤は抗菌・抗ウイルス・抗アレルゲン(アレル物質)機能を有しており,インフルエンザウイルスやポリオウイルスなどといった既知のウイルスに対する有効性が確認されている。今回の共同研究では,数万個のSARS-CoV-2粒子が,集塵用エアフィルターに含まれるウイルス不活性化剤(尿素と酵素)により,反応時間60分間でほぼ完全に不活性化できることが確認された。
一方,UV-C LEDは微生物汚れ対策の機能を有している。実験では,樹脂製のプレート上に数万個のSARS-CoV-2粒子が含まれる液体を塗り広げ,3cmの距離からUV-C LED単体でライトを照射した。この際,照射時間内にウイルス塗布面が乾燥しないように,密閉した装置内で照射を行なった。その後,照射面のウイルスを回収し,酵素・尿素製剤と同様に不活性化効率を測定した結果,10分の照射で,ほぼ完全に不活性化できることが明らかになったという。
空間に漂うウイルスの除去とエアフィルターに捕捉したウイルスの不活性化は,空間の浄化を通じたウイルス感染制御実現の可能性を示す新しい技術であり,現在から “アフターコロナ”時代にも有用だとする。
研究グループは,新型コロナウイルスに対する技術の有効性が確認されたのを受け,今後は密閉チャンバー型実験装置を開発し,空間からのウイルス除去・不活性化についても引き続き検証を行なっていくとしている。