NIFSら,環境モニタリング向け赤外光源を開発

核融合科学研究所(NIFS)と秋田県立大学は,様々な成分分析に利用できる赤外光源の開発に成功した(ニュースリリース)。

「環境モニタリング」や「呼気診断」のような成分分析の手法の一つに,赤外線を用いる方法がある。

一般的な分子は赤外線を吸収する性質を持ち,それらが吸収する光の波長(吸収波長)は分子の種類によって異なる。そのため,赤外線を物質に照射し,その物質を透過してきた光が,どの波長でどの程度吸収されて弱くなっているかを計測することで,存在する分子の種類と量が分かる。

特に,中赤外線の波長範囲(2~15μm)には,炭酸ガス,炭化水素,水蒸気などの様々な分子の吸収波長があるため,様々な成分分析に利用できる。

研究グループは,高速・高精度な成分分析を行なう,赤外線と光ファイバーを利用した「赤外光ファイバーセンサー」の開発研究を進めているが,これには中赤外線を高輝度で安定して発生する光源が必須となる。また,赤外線を特殊な構造の光ファイバーに伝送させるため,光源からの光が効率良く光ファイバーの中へ送り込めるものでなければならない。さらに,小型で安価に作製できる実用性も望まれる。

今回研究グループは,赤外光源のために新たな材料を開発した。この材料は,フッ化物ガラスに特殊な元素を添加したもので,安価で小型な半導体光源が発する光(波長0.98μm)を照射するだけで,広い波長範囲の中赤外線を発する。そして,この新材料を使って特殊な光ファイバーを作製し,半導体と組み合わせた光源を構築した。

この光源は,半導体の光を作製したファイバーに入射し,そこで強い中赤外線を発生させて外に取り出す。ファイバーは中赤外線を発するとともに,それを強める役割を担う。この光源は自然放射増幅(ASE)光源と呼ばれるレーザーの一種で,従来になかった広範囲な中赤外線(2.5~3.7μm)を高輝度で安定して発振させることに成功した。

さらに,発生した光はビーム品質が高く,中赤外線を効率良く,伝送用の光ファイバーの中へと送り込めることが分かった。これにより,開発した光源が,赤外光ファイバーセンサーに適用可能であることを示すことができた。

この光源を使って、研究グループが開発研究を進めている「赤外光ファイバーセンサー」が実現すれば,高速・高精度な成分分析が可能になり,産業用途や医療用途など,様々なアプリケーションで利用できるとしている。

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