東京都健康長寿医療センターと日本健康寿命延伸協会は,「運動を行う事が困難な高齢者」のフレイル対策として遠赤外線低温サウナプログラムが有効であることを研究により明らかにした(ニュースリリース)。
近年,超高齢社会におけるフレイル対策の重要性が指摘されている。”フレイル”とは”虚弱”を意味し,その評価は「体重減少・握力低下・歩行速度低下・活動量低下・易疲労感」の5つの項目により行なわれる。
フレイル対策として,運動や栄養による予防の重要性が指摘されているが,高齢者には膝・腰の痛みや息切れなどの症状,更には,低体力が理由で運動を行なう事が困難な場合が多い。
フレイルは老年症候群の一部として知られ,加えて,フレイルと老年症候群は互いに悪循環を形成することが指摘されている。老年症候群とは高齢期に見受けられる症状などの総称であり,代表的には誤嚥,尿漏れ,転倒・骨折,もの忘れ,寝たきり等が挙げられるが,めまいや難聴なども含まれる。
研究グループは日々の高齢者診療に携わる中,慢性的な冷え・浮腫み・慢性的な痛み(膝や腰の痛み)・しびれ・息切れ・尿漏れ・便秘・食欲不振・不眠・皮疹などの高齢者が日常的に訴えられる老年症候群に注目した。
加えて,これまでの知見を踏まえ「遠赤外線低温サウナ」によるプログラムが,高齢者が日常的に悩まれる老年症候群の程度を改善し,更には老年症候群とフレイルの悪循環を阻止することで,フレイルをも改善するのではと考え,遠赤外線低温サウナプログラムの開発を通して,老年症候群やフレイルへの効果・検証を行なった。
研究は,病状や症状,低体力の為,運動を行なう事が出来ないプレフレイル(フレイルの前段階)を含むフレイル高齢者を対象に行なった。週2回3カ月間に渡る遠赤外線低温サウナプログラム(15分間のサウナ浴と30分の安静保温)を実施し,老年症候群やフレイルの改善の有無を検証した。
その結果,遠赤外線低温サウナプログラムは「運動を行うことが困難な高齢者」の,冷え・浮腫み・慢性的な痛み・息切れ・尿漏れ・皮疹といった老年症候群の程度を改善し,加えて,体重や歩行速度,活動量の改善を通してフレイルの程度を改善することも確認できたという。
研究グループではこの結果を踏まえ,遠赤外線低温サウナプログラムが,超高齢社会における「運動を行なう事が困難な高齢者」の身近な老年症候群の一部の症状の改善やフレイル対策に活用に期待できるものだとしている。