理研,超高感度SERS分光法を開発

理化学研究所(理研)は,表面増強ラマン散乱(SERS)分析の新しい手法「液界面支援SERS分光法」を開発し,濃度10アトモーラー(aM,1aMは100京分の1[10-18]モーラー)以下の超微量物質の検出に成功した(ニュースリリース)。

「表面増強ラマン散乱(SERS)」は,ナノスケールの構造を持つ貴金属の表面に分子が吸着したとき,バルク基板上と比べてラマン散乱の強度が大きく増幅される現象で,高感度分析手法として広い分野で利用されている。

理論上は,従来のバルク基板上のラマン散乱の一兆倍以上ラマン散乱の強度が増強されると考えられているが,実際の増強度は100万~1億倍程度であり,フェムトモーラー(fM,1fMは1000兆分の1[10-15]モーラー)レベル以下の濃度の物質を検出することは困難だった。

今回研究グループは,ナノ周期構造を持つ金属薄膜上での新しい形態のSERS分析方法(液界面支援SERS: LI-SERS)を提案した。LI-SERSを実行するために,全フェムト秒レーザー加工技術で作製した3次元マイクロ流体SERSチップ)を用いた。

作製した3次元マイクロ流体SERSチップに,染料の一種であるローダミン6G(R6G)溶液を導入し,測定を行なった。従来のSERS測定におけるラマン散乱増強度,1.1×108倍に対し,SERS測定(LI-SERS)では,3.2×1013倍と見積もられるラマン散乱増強度を得た。

ラマン散乱増強度をさらに上げるために,SERS基板として用いた金属の周期的ナノリップル構造に偏向方向を90°回転したフェムト秒レーザー光を再び照射し,2次元の周期的ナノドット構造を形成した。ナノドットの平均サイズは約200nmで,各ドット間の間隔(ギャップ)は約50nm。

2次元の周期的ナノドット構造を用いた従来のSERS測定におけるラマン散乱増強度は7.3×108倍だが,LI-SERS測定では,1.5×1014倍のラマン散乱増強度を達成した。その結果,濃度10-17M(10aM)のR6Gを検出。得られたラマン散乱増強度は,過去のSERS分析と比較して最大で,R6Gの検出限界は最小の濃度を達成した。

LI-SERSにおけるラマン信号強度の増強メカニズムは,レーザー光が金属に照射されたことで熱が生まれ,その温度勾配によって溶液中でマランゴニ対流が生成され,R6G分子がSERS基板上のレーザー光が照射されている付近に凝集することが考えられるという。

この成果は,東京ドーム10個分の水に滴下した,目薬1滴分の液体を検出したことに匹敵する。今後はこれまでにない超高感度のSERS分析を実現するとともに,COVID-19などのウイルス感染検査への応用も期待できるとしている。

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