米オムニビジョンは6月25日,新製品である車載向けイメージセンサー2機種を発表し,オンラインにて記者会見を行なった。
「OX03C10」は,HDRとLEDフリッカー軽減機能(LED flicker mitigation:LFM)を搭載したASIL-C対応イメージセンサー。業界で初めてとなる140dBのHDR性能とLFM機能を,3.0μmサイズのピクセルにて実現した。用途としてサラウンドビューシステム,電子ミラー,リアビューカメラを想定している。
自動車業界においては米でリアビューカメラが義務付けられるとともに,後席の乗員に視界を遮られない電子ルームミラーや,死角の小さい電子サイドミラーも注目を浴びている。そこでは高速走行時の撮影に対応する高フレームレート,高解像度,そして高いHDR性能とLFM機能が求められている。
現在車載カメラに要求されているHDRは120dBだが,実際の運転時には150dB程度の明暗差が発生する場面も少なくないという。これには露光時間を変えることでも対応できるが,LFM機能を有効にするには露光時間を11~16.7msに固定することが必要で,明暗差が大きい場面ではLFMが機能しない可能性がある。
LED照明やLEDヘッドランプが普及した現在,緊急車両の点滅とフリッカーの区別,LED標識の判読のためにも車載カメラにLFMは必須となってきており,しかもトンネル出口付近のような明暗差が大きい環境においてはLFMとHDRが同時かつ最適に動作する必要がある。
これを満たすために同社はさらなる高ダイナミックレンジが必要と考え,今回,これまで露出の異なる3枚の画像を重畳して1枚の画像としていたHDRを,さらに1枚追加して4枚とすることで140dBを達成した。
LFMについては,同社はスプリットピクセル(SP)を用いて実現している。これはRGBの各ピクセルを,大きなピクセルと小さなサブピクセルの2つに分けた構造を持たせる技術。サブピクセルの開口率を小さくすることで飽和する時間を稼ぎ,LEDのフリッカーに対応するだけの長時間露光を可能にする。
これらの技術により今回,HDRとLFMを動作させながら,1920×1280(約250万画素)の解像度で60fpsでの撮影を可能にした。さらに,センサーのロジック層にADコンバータやHDR,サイバーセキュリティーなどのロジックを搭載する積層技術によりCSP(チップスケールパッケージ)を実現,競合製品より50%の小型化と25%低い消費電力を実現したという。
この日発表したもう一つの製品は,コンパクトサイズのドライバー監視用赤外線カメラモジュール「OVM9284」。居眠り運転の防止にドライバー監視(Driver Monitoring System:DMS)の要望が高まっている。一般車両において居眠り事故が多いこともあるが,開発が進む自動運転においても,特定の場面で運転を自動車からドライバーへ交代するレベル3の自動運転車では,DMSは必須となる。
従来のDMS製品は800nm帯に感度を持っていたが,照明用のLEDがわずかに赤く光るため,ドライバーに監視されていることを意識させないよう,LEDが赤く光らない940nmに感度を持たせた。さらに,小型化サイズ(6.5×6.5×6.2mm)を実現し,競合製品よりも消費電力が50%低いことで排熱も少なく,ピラーにのような小さなスペースへ収納できる。
1/4インチ光学フォーマットで解像度は1280×800。ローリングシャッターと比べて露光時間が短く,LEDの低消費電力化が可能なグローバルシャッターを採用した。同社は監視カメラ向けセンサーで,近赤外線の量子効率を向上する独自技術「Nyxel」を持っており,この製品にも応用しているという。
イメージセンサー,シグナルプロセッサーと,車載向けとして世界初だというウエハーレベルオプティクスをコンパクトにパッケージングしている。リフロー可能なため,自動化された表面実装(SMT)装置を使用して他の部品と同時にプリント回路基板に実装でき,品質を向上させながらコストを削減できるとしている。
「OVM9284」は既にサンプルの入手が可能で,量産は2020年の第4四半期に開始を予定しているという(「OX03C10」のサンプルについては要問合せ)。