宇宙航空研究開発機構(JAXA),立教大学,足利大学,千葉工業大学,会津大学,北海道教育大学,名古屋大学,独German Aerospace Center(DLR),独Max-Planck Institute for Extraterrestrial Physics,スコットランド University of Stirlingの研究グループは,小惑星探査機「はやぶさ2」到着前の予測に反し,小惑星リュウグウが隙間だらけの物質でできた天体であることを解明した(ニュースリリース)。
小惑星探査機「はやぶさ2」は始原天体と考えられるC型小惑星を探査した。この研究では,天体がダストから微惑星,微惑星から惑星へと,どのように進化したのかをテーマとし,中間赤外線カメラTIR,サーモグラフィによる撮像に注目した。これにより主要な地形や地質構造を検知でき,季節変動も調べることができる。
研究グループは史上初のC型小惑星の全球撮像を連続1自転分実施した。理論計算により,リュウグウの熱慣性(温まりやすさ,冷めやすさの指標で熱慣性の値が小さいほど温まりやすく冷めやすい)を調べたところ,予想に反し非常に小さな値(隕石の一種である炭素質コンドライトやその他地球の石に比べて非常に小さな値)になった。
より詳しくモデル計算と比較すると,リュウグウは極めてスカスカ(高空隙)で凹凸が激しいことがわかった。また,岩塊と周辺土壌が同じ温度であることから,いずれもスカスカの物質であることがわかった。岩塊と周辺土壌で観測された温度日変化は小さく,さらに,両者でほぼ同じ温度の日変化を示す。これは岩塊と周辺土壌が熱的に同等の物質であることを示す結果となる。
TIRの観測ではコールドスポットと呼ばれる,周囲よりも20度以上も温度が低い岩塊を複数発見した。これらの熱慣性は,地上で発見された炭素質コンドライトと呼ばれる隕石と同程度で,密度も同程度だと推測されるという。
地球のような岩石天体は,太陽系初期にふわふわのダストが集まって成長し形成したと考えられている。しかし,マイクロメートルサイズのふわふわとした(密度の低い)ダスト粒子から密度の高い岩石天体へとどのように成長するのかは解明されていない。今回の成果から,リュウグウはふわふわのダストから稠密な天体が形成する過程の途中にある天体かもしれないことがわかったとしている。