立命館大学,東京農工大学,仏ポールサバティエ大学,京都大学,高輝度光科学研究センターの研究グループは,次世代蓄電池として期待されるマグネシウム二次電池用電極材料を新たに見いだした(ニュースリリース)。
現在,社会に広く普及している二次電池であるリチウムイオン電池は,スマートフォンやタブレット端末で広く利用されており,世界規模の環境問題解決に貢献可能な電気自動車やスマートグリッドへの活用が強く期待されることから,2019年のノーベル化学賞にも選出されている。
次世代の二次電池では,高い安全性と低コスト,蓄えるエネルギーの拡大をすべて満たすことが切望されている。動かすイオンとしてマグネシウムイオンを用いたマグネシウム二次電池は,理論的には高い性能と安全性を有しているものの,材料中でのイオンの動きが遅く,実用的な運転条件を満たすことが困難だった。
研究グループでは,カーボンと複合化させたナノ材料を合成して,材料中に歪みを導入させたユニークな電極構造を設計した。この材料を用いると,室温付近でも数時間での充電,放電がマグネシウム二次電池でも可能となり,日常生活で使用可能なレベルであることを実証した。
大型放射光施設SPring-8での高エネルギーX線を用いた解析により,新たに開発した材料の構造は,結晶体とアモルファス体の中間状態のような構造であり,従来の欠点であった固体内の遅いマグネシウムイオンの拡散を促進させる効果を見いだした。
この研究では,ナノ空間を用いた材料設計が従来技術では克服が困難な遅いイオンの動作を促進させる効果を実証した。今後はこの設計指針を用いて,材料の高性能化を進めるとともに,社会実装へ向けたマグネシウム二次電池の製品化を目指すとしている。