電子情報技術産業協会(JEITA)は12月18日,同日発表した「電子情報産業の世界生産見通し」および「5Gの世界需要額見通し」について,都内にて記者会見を行なった。
会見したJEITA会長の遠藤信博氏(NEC取締役会長)によると,CPS/IoTの世界市場は予測を超えて大きく拡大しており,2017年に予測した2030年市場は404.4兆円だったが,今回の調査によって2018年において市場は既に241.1兆円となっており,2030年には532.1兆円になると大幅に上方修正した。
これをけん引する電子情報産業の世界市場については,2019年は世界経済の先行き不透明感から在庫調整局面にあり,半導体メモリの価格低下もあったことから2018年比1%増の2兆9,219億ドルと微増にとどまった。一方,2020年には5Gの進展や攻めのIT投資などにより,前年比5%増の3兆807億ドルと,過去最高を更新する見込みとした。
品目で見ると,電子部品が2019年から回復して2020年は過去最高となるほか,今や9,000憶ドルを超える市場になりつつあるソリューションサービスは2019年,2020年ともに過去最高の世界生産額を更新するとしている。
これに対し日系企業の世界生産額は,2018年の38.4兆円に対し,2019年は37.4兆円とマイナス成長となった。これは世界的な先行き不透明感による投資抑制に起因するもので,特に金額の大きい半導体と電子部品のマイナスが響いた。また,国内生産額も2018年の11.7兆円から2018年は11.0兆円に減少している。
JEITAではこれに対し,IoT機器の高機能化による新ビジネスの創出により2020年は需要拡大が見込めるとして,日系企業の世界生産額は前年比2%増の38.1兆円とプラスに転じると見る。これには電子部品や通信機器,ソリューションサービスがドライブとなるとしている。一方,国内生産額は対前年に比で横ばいの11.0兆円とした。
続いて5G市場については,Society 5.0のキードライバーとして世界需要額は年平均63.7%と急激な成長を遂げるとしている。具体的には2030年には168.3兆円となり,これは2018年比で約300倍となる。IoT機器市場については自動運転車,ロボット,ネットワークカメラなどがけん引するとしている。
また5Gの2つのフィールドである,キャリアの公衆網に接続する「WAN5G」と,クローズドな空間で用いられる「ローカル5G」の2030年世界需要額については,WAN5Gが158兆円,ローカル5Gが10.8兆円とした。
特にローカル5Gはこれまで無線化が進まなかった工場や農場,建設現場やイベント会場,病院などでの利用が見込まれることから,2020年に始まる日本のローカル5G需要は,2025年に3,000憶円と立ち上がり,2030年までには約4.4倍の1.3兆円にまで拡大するという。IoT機器としてはロボットやドローン,自動運転車が需要をけん引するとしている。
政府が「5G投資促進税制」を発表して5Gを後押しする中,国際的な枠組みの中で日本がプレゼンスを発揮していくためには,強みであるITとOT(運用技術)をソフトウェア組合わせ,付加価値を高めるとともに国内市場を立ち上げ,海外市場へ示していくことが重要だという。JEITAでもあらゆる産業との連携を強化しながら,Society 5.0の実現に取り組んでいくとしている。