京都産業大学と台湾の中央研究院天文及天文物理研究所の研究グループは,新しい共著論文をPhysical Review Dから出版した(ニュースリリース)。
ニュートリノが0ではない質量を持っていることは,素粒子の標準模型のほころびを示している。一方,暗黒エネルギーの存在量は宇宙論の標準シナリオでは説明することができないという。これらの謎は現代物理学に突きつけられた大きな宿題とされており,これを解くことができれば新しい物理学が広がることは確実で,たくさんの研究が進んでいる。
ニュートリノの質量は0ではないことはわかっているものの,いまだ正確には測ることができていない。この小さな素粒子の質量の上限を決めているのは,実は非常に大きなスケールである宇宙の観測であることは驚きの事実だとする。
また,宇宙全体の膨張を支配する暗黒エネルギーの存在を示したのは,超新星爆発と呼ばれる天体の起こす大爆発の精密観測だったという。
このように,素粒子・天体・宇宙全体,という長さにして実に10の40乗以上にもわたる様々なスケールの物理学がお互いに密接に関わっているのが,宇宙論や宇宙物理という学問のエキサイティングな点とされている。
この研究で,研究グループは,Zwicky Transient Facility (ZTF; 現在進行中の可視光変動天体観測計画) や Wide Field InfraRed Survey Telescope (WFIRST; 2020年代半ばに打ち上げ予定の赤外線望遠鏡)といった観測データを用いて多数の超新星爆発が観測される時代には,ニュートリノ質量や暗黒エネルギーの特性にどのような理論的制限を加えることができるのかを計算した。
その結果,これらの観測データを理論解釈するためには重力レンズ効果や超新星の特異速度といった情報が本質的になることを示し,今後の観測計画に対して重要な理論提言を行なったとしている。