金沢大学と米航空宇宙局(NASA)の研究グループは,フェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡衛星およびニール・ゲーレルス・スウィフト衛星(スウィフト衛星)を用いて,人類史上「最も高いエネルギー」のガンマ線を放出するガンマ線バーストを捉えることに成功した(ニュースリリース)。
また,このガンマ線バーストの爆発現象は,同時に大気チェレンコフ望遠鏡MAGICによっても同時観測されており,これら3つのコラボレーション観測の実現により,これまで謎に包まれていたガンマ線放射のメカニズムの起源に強く迫る成果を導き出すことができた。
ガンマ線バーストは初めてその現象が発見されてから50年近く経過しているが,いまだにガンマ線バーストから放たれる高エネルギーガンマ線の放射起源は明らかにされていなかった。その理由として,高エネルギーのガンマ線が放出される時間が数100秒から数1000秒程度と短いことに加え,その爆発がどこで起きるか分からないことから,観測結果が極めて乏しいということが挙げられる。
今回観測したガンマ線バースト(GRB190114C)では,フェルミ衛星およびスウィフト衛星が同時にX線およびガンマ線の放射を捉えた。そしてフェルミ衛星が,従来から定説と考えられている「シンクロトロン放射」では説明できない未知の高エネルギー超過成分の兆候を発見した。
さらに,ガンマ線バーストの発生直後から,MAGICがこの未知の超高エネルギーガンマ線を捉えることに成功し,これらの観測データを全て紡ぎ上げることで,最も有力な候補として「逆コンプトン散乱」と呼ばれるプロセスが,未知の高エネルギー超過成分の起源を説明できることを実証した。
ガンマ線バーストから生じる高エネルギー現象は,未解明の点がまだ多く残されているという。今回の観測がもたらした成果は,これまでのガンマ線バーストの放射メカニズムの理解を大きく前進させ,同様の観測を今後さらに実現していくことにより,未解明のガンマ線バーストの物理的描像が明らかになることが期待されるとしている。