レーザー学会主催の第39回学術年次大会が1月12日~14日の3日間,東海大学高輪キャンパスにおいて開催された。 今回企画されたシンポジウムは14件で,このうち、日本光学会とのジョイントシンポジウムが2件企画された。学術講演は産業賞・奨励賞,招待講演を含めて合計268件に上った。また,ポスターセッションも行なわれ,2日目の懇親会において優秀賞も表彰された。
毎年多くの聴講者が集まる公開特別講演会は今年,アマダホールディングスの迫宏氏,東海大学創造科学技術研究機構の田口かおり氏,ニコンインステックの木村俊一氏の3氏が登壇した。併設の展示会『レーザーソリューション』には28社が出展した。
なお,スペースの都合上,すべての講演を紹介することができないため,ここでは公開特別講演会で登壇したアマダホールディングスの迫氏の講演内容を紹介したい。
迫氏は,板金加工装置メーカーのアマダホールディングス・上席執行役員で,技術研究所の所長を務めている。今回の講演テーマは『レーザー加工とモノづくり~シートメタル加工の変遷と展望から~』で,レーザーを導入してシステム化する立場から,レーザーに対する優位性と問題点を説いた。
講演では黎明期、普及期、拡大期、変革期に分けてレーザーと加工システムの変遷を解説。板金加工向けでは当初,炭酸ガスレーザーが採用されてきたが,変革期にある現在はファイバーレーザーが台頭している。
しかしながら,迫氏はファイバーレーザーの欠点について言及。炭酸ガスレーザーと比較すると,ドロスの付着が多く,厚板や反射材料の加工は難しいとし,レーザーの性能も重要だが、今最も世界中で開発が活発化しているのはビームシェーピングだという。つまり,高品位な加工品質を得るための光学技術の最適化が不可欠という。 アマダでは独自のビーム制御技術『ENSISテクノロジー』の開発を進めている。講演では最新のビームシェーピング技術を紹介した。高出力対応のビーム可変テクノロジーとオートコリメーションユニットなどを組合わせ,ビーム形状を変えて高速・高品位加工を行なうというもので,現在第2世代が開発されている。
迫氏はまた,レーザー加工におけるシミュレーションの重要性も説いた。レーザー加工機を発表したとしてメーカー側の問題点として,加工データの収集に膨大な時間がかかること、条件出しには習熟したエンジニアの能力に頼らざるを得ないことなどを挙げた。その解決策として,経験や勘に頼ることのない理論に基づく加工条件の設定と最適化が必要だとしている。レーザー加工の世界にもAIの活用が求められている。